副題は予言する――「BIRDIE WING -Golf Girls' Story-」3話レビュー&感想

©BNP/BIRDIE WING Golf Club
惹かれ合う「バーディーウィング」3話、イヴは葵と再戦すべく世界選手権に潜り込む。今回の副題は2人だけの試合」……だがはっきり言えば、この副題は嘘をついている。
 
 

BIRDIE WING -Golf Girls' Story- 第3話「2人だけの試合」

――「1コース、全力で…私はあなたとゴルフがしたいです」。
葵との約束を果たすため、イヴはローズのつてで裏社会を取り仕切るカトリーヌに直談判。なんとか「U15女子世界選手権」最終日に潜り込むことに成功した。イヴはすれ違いざま、葵に宣戦布告する。イヴのショットを目の当たりにした他の出場選手たちが次々と自信を喪失していく中、葵は勝負が楽しみで仕方ない。試合は、イヴと葵の一騎打ちになる。はたして2人の勝負のゆくえは…?

公式サイトあらすじより)

 

1.2人だけの試合

「2人だけの試合」の副題が嘘。これはどういうことか?もちろん今回の舞台、U15女子世界選手権は複数の選手が参加するものだから……などという理由ではない。
 

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ローズ「イヴにとってゴルフは相手を倒すための手段、虹色の弾丸で相手をことごとく葬っていくただの破壊者だ……それがレインボー・バレットのイヴなんだよ」
 
イヴが出場できるよう大会のスポンサーに談判した裏社会の人間・ローズが説明するように、アンダーグラウンド出身のイヴのゴルフは1対1のマッチプレーに最適化されたものだ。その一打は単に勝利を至上としているだけでなく相手の心をズタズタにするパフォーマンスも兼ねており、イヴと一緒にホールを回る選手は彼女のショットに調子を崩され勝負以前の状態に陥ってしまう。そんな状態の選手はイヴにとって存在しないも同じだ。また葵にしても前回披露したようにその実力は圧倒的で、2位のナフレスジュニアチャンピオン・エレーヌですら最終日には7打差を付けられ相手になっていない。アバンの視線が示すように、イヴと葵の眼中には互いしか映っていない。
 

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楓「天鷲は負けている。最終日のスコアだけなら一打差で、このイヴ・アレオンという選手に……」
 
イヴはあくまで選手権最終日のみの特別招待選手に過ぎず、葵と優勝を争うことはできない。彼女と葵の最終日スコアが激戦を繰り広げていることに気付けるのは、優れた眼を持つごく一部の人間に限られている。多くの人が注目する大会スコアにはもはや意味がなく、イヴと葵のスコアの比較だけに本当の勝負がある。その点で「2人だけの試合」というのは正しい。……だが忘れてはいけないのは、これは2人だけの力で成立した勝負ではないことだ。
 
 

2.2人だけの試合は2人だけでは成立しない

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リリィ「いい加減教えてよ。どうしてここにいんの?なんで出場してんの?」
イヴ「約束したじゃない」

 

学校にも通わずアンダーグラウンドで生きてきたイヴと、天才ゴルファーの両親を持ち裕福な環境で育ってきた葵。前回2人が交差したのは奇跡にも等しい偶然に過ぎず、本来なら二度と会うこともなかったはずだ。けれどもう一度一緒に、全力でゴルフをしたいという葵との約束に突き動かされイヴは世界選手権の場に立った。同じくアンダーグラウンドのゴルファーであるローズに頼みこみ、彼女と大会のメインスポンサーであるカトリーヌの折衝によって再びイヴは葵とゴルフをすることができた。これは2人の思いだけが起こした奇跡か?否。
 

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ローズ「あいつからは金の匂いがプンプンするからな」
 

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カトリーヌ「私は鉄は熱い内に打つの。賽はもう宙を飛んでる、戻せないわよ?」
 
ローズがイヴの頼みを聞きまたカトリーヌが特別招待選手にねじ込んだのは、慈善事業だとかイヴの心意気に打たれたとかいった理由ではない。それが2人にとってビジネスの機会になると踏んだからだ。ローズがイヴを利用して金儲けを企んでいるのは劇中でも語られているし、カトリーヌはローズが「例の件」なるものを引き受けると言うからこそその願いに応えている。
 
ローズとカトリーヌは純粋にイヴを応援しているのではなく、彼女達には彼女達の目的がある。また葵にしても立場上はけして個人参加ではなく、その背にはゴルフの名門校・雷凰女子学園の栄誉がかかっている。直接勝負を繰り広げているのが2人であっても、背後に多くの人間が絡み合っているならそれは「2人だけの試合」とは言えない。だから今回の副題は嘘なのだ。
 

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雨音(これがラストショット。これを入れれば葵の勝ち……)
ローズ(……そいつはどうかな)

 

この世界選手権が2人だけの試合ではないことを証明するように、ローズはイヴと葵自身にすら見えていなかった結末を一人見越して笑う。最終ホールの最後も最後、葵がイヴを一打上回って勝利するはずだった白球はなぜかカップに落ちることはなかった。純粋にゴルフを楽しんでいたはずのイヴと葵の試合はおそらく、ローズによって汚されて・・・・しまったのだ。
 
 

3.副題は予言する

「2人だけの試合」というのは嘘に過ぎない。参加選手が他にも多数いようとも、一緒にホールを回ることができずともねじ伏せたはずのイヴと葵の勝負は、汚い思惑に潰されてしまった。だがこれはおそらく、結果的には事態をプラスに進めることになる。
 

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最終日のみのスコアの結果は、本来1打差で葵がイヴを上回るはずだった。選手権にしても最終日のスコアにしても、葵だけが最後に勝者として残るはずだった。しかし既に描かれているように、葵の球はなぜかカップから逸れイヴを上回ることはなかった。最終日のスコアに関してはイヴと葵の2人が――2人だけ・・・・が並び立つことになったのだ。
 

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今回の副題は嘘だ。このU15選手権がイヴと葵の「2人だけの試合」だというのは嘘だ。しかし一方、嘘の結果2人はスコア上で並び立っている。ひっそりと行われたはずの2人だけの試合はこうして、誰の目に明らかなものとして記録されている。この記録を元にして、イヴが葵に匹敵するゴルファーであることはこれから多くの人間に注目されていくことだろう。どういった経緯になるのか今はまだ想像もつかないが、イヴは再び葵と試合をすることになる。今回約束を果たして終わるはずだった2人の縁は、途切れることなく未来へと続いていく。「2人だけの試合」が嘘なのは、あくまで今だけの話に過ぎない。
 

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今は嘘であったとしても、それが未来に至るまで同じとは限らない。いつか再びイヴと葵が競う時、この副題は嘘から予言へと変わるのである。
 
 

感想

というわけでバディゴルの3話レビューでした。あまりに気持ちのいい展開からの最後に驚きしましたが、葵が勝ってたら話が終わっちゃうとこでしたね。いやまあ、ローズさん何もしてなかったらごめんなさいなんですが。
キャラ紹介には日本のキャラがたくさん登場してますが、今後はどういう展開になるんでしょう。ますますもって目が離せません。
 
 

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