縁は縁を呼ぶ――「まちカドまぞく 2丁目」3話レビュー&感想

©伊藤いづも・芳文社/まちカドまぞく 2丁目製作委員会
世界広がる「まちカドまぞく 2丁目」。3話ではシャミ子の家にインターネットが開通する。今回はネットとの出会いを通してシャミ子の未来が広がるお話だ。
 
 

まちカドまぞく 2丁目 第3話「闇の魔女ふたたび!湯けむりフロムヘル!」

リリスが2000年もの間閉じ込められていたこと知ったシャミ子と桃は、シャミ子の体で一日外の世界を自由に遊んでもらおうと計画をする。二人に仲良くなってほしいというシャミ子の願いから、リリス健康ランドで過ごすことになった桃。果たしてシャミ子の願いは二人に届くのか⁉
 

1.必要な媒介

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桃「私の部屋からのWi-Fiを引っ張ってきてるの」
 
今回の前半はシャミ子の家でインターネットが使えるようになる話だが、冒頭説明されるようにこれは工事をして使用できるようになったわけではない。隣室の桃のネット環境から無線LANで、Wi-Fiを利用できるようにしたものだ。シャミ子がネットに接続するには桃の存在が必要不可欠というわけだが、これは抽象的な話に留まらない。
 

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桃「このような場合、まぞくはどうしますか?」
シャミ子「急いで電話をかけ、身分を明かして謝り倒す!」

 

シャミ子はパソコン知識に乏しい上に人に騙されやすいまぞくであるから、一人でネットに繋ぐのは一苦労だ。フリーズしたアプリケーションへの対応も分からないし、ワンクリック詐欺のような手口にも容易く引っかかる恐れが拭えない。桃はシャミ子の母や妹と結託して彼女にネットの使い方を手ほどきしたが、これは「シャミ子がネットに接続するには桃の存在が必要不可欠」なのが具体的に現れているとも言えるだろう。そして更に見れば、「シャミ子がネットに接続するには桃の存在が必要不可欠」なのはやはり抽象的な話でもある。
 

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シャミ子(わたしの知らない桃がインターネットに転がっている……それを見つければ労せずして桃のツボが分かる。つまり桃の笑顔に一歩近づける!)
 
今回の話の半分が費やされていることから分かるように、シャミ子は熱心にインターネットへ接続しようとする。なぜか?別にネットで買物がしたいだとか、まぞくについて調べたいとかいったことは理由ではない。彼女が慣れない作業に苦心しながらパソコンを操作し、Twitterもとい「つぶやいたー」に登録したのは桃のそれを見るため――桃をもっと知るためだ。彼女の笑顔に近づくためだ。その理由がなければシャミ子は途中で諦めていたもおかしくなかったはずで、つまり彼女にとって桃はインターネット接続の動機・・として機能している。
 
具体的にも抽象的にも、シャミ子がネットに接続するには桃の存在が欠かせない。そして、こうした媒介を必要とするのはけしてシャミ子だけではない。
 
 

2.縁は縁を呼ぶ

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リリス「ふーはっはー!闇の魔女リリス、子孫の体を借りて参上だ!」
 
今回の後半はリリスが子孫であるシャミ子の体に憑依する話だ。長い時を生きるまぞくではあるが"ごせん像"に閉じ込められた彼女は自力ではほとんど何もできず、特にここ2,000年は封印空間に一人閉じ込められたような状況だったことが明かされる。まぞくの血に目覚めたシャミ子が自分の声に気付くようになったからこそリリスは再び外部と繋がりを持つことが――"接続"することができた。そう、これは前半のインターネットと同じ構図だ。シャミ子の成長で雨の日でも憑依できるようになったとリリスが語るくだりもまるで電波状況のようだが、前半に重ねて表現するなら『リリスが外部に接続するにはシャミ子の存在が必要不可欠』なのである。
 

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桃(耐えろ千代田桃、今ここでこいつを一本背負いしてもビターンとなるのはシャミ子の体!)
 
また、劇中で語られるようにこの後半は桃とリリスの親睦会でもある。そもそもこの2人は会話が長続きすることが少なかった。なぜか?これまではたいていリリスが桃を煽る形になり、怒った桃が"ごせん像"をポイポイ遠投するのがある種の様式美になっていたからだ。しかし今回は二人の会話は途切れない。リリスがごせん像ではなくシャミ子の体に憑依している以上は遠投などできないし、一本背負いしてもシャミ子の体がびたーんとなるだけだと桃が理解している以上、いつものようなことにはならない。
 
また桃にしても一方的に我慢を強いられているわけではなく、筋トレへ誘導したり完全な暗闇が苦手という弱みを握ったりとリリスがシャミ子の肉体に憑依したからこそ得られたものがいくつかある。『桃がリリスに接続するにはシャミ子の存在が必要不可欠』だったのであり、こうした繋がりは二人がシャミ子と縁を結んでいなければ起き得なかったことだ。
 

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ダイレクトな接続は効率的である種理想的だけれど、障害や危険もあればかえって角が立つこともある。シャミ子の家に直接インターネットを開通しようとすれば費用を捻出しなければならないし、互いのことを知りたい気持ちを素直に口にするのは今のシャミ子や桃には少しハードルが高い。桃とリリスが直接向き合えば遠投して会話が終わってしまうのも先に書いた通りだ。けれどそれなら繋がりようがないのかと言えばそんなことはなく、声ではなく文字にしたり周囲の人間を経由することで離れたまま繋がることもできたりする。迂回や経由はけして、単に非効率や非論理的なものとは限らない。
 
 

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誰かや何かを経由することで、人は直接繋がる術を持たないはずの新しい別のものに手を伸ばすことができる。繋がりとはそこで完結するものではなく、更に多くの繋がりへと人を誘うルーター(道を指示する者)としての機能を持ってもいるのだろう。ネットが広大なのは、そこに広がるのが良くも悪くに無限に等しい縁であるからだ。
縁は縁を呼ぶものであり、だから出会いには人の未来を大きく変える力が宿っているのである。
 
 

感想

というわけでまちカドまぞくアニメ2期3話レビューでした。直感的に浮かんだ結論へのルートがなかなか見つからず、前半の桃がまるでルーターみたいだな……と書き進めていく内に当初の結論の少し先にたどり着けました。つぶやいたーが今後何かのヒントになったりすることもあるのかな。次回は新キャラ登場のようで楽しみです。
 
 

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