キャディーの本分――「BIRDIE WING -Golf Girls' Story-」9話レビュー&感想

©BNP/BIRDIE WING Golf Club
新たな出会いの「バーディーウィング」。9話で舞台は日本に移り、イヴの存在が人々を触発していく。今回見えてくるのは、本作におけるキャディーの役割とは何かということだ。
 
 

BIRDIE WING -Golf Girls' Story- 第9話「早乙女イチナはプロキャディーを目指してる」

ナフレスから遠く離れた国、日本――。山梨にある雷凰女子学園はゴルフの名門校。
プロのキャディーを目指しているゴルフ部員の早乙女イチナは、学園内の練習コースで、イヴの放つショットを目撃する。イヴは葵との約束を果たすため、雷凰女子学園にやってきたのだ。部長の神宮寺絹江に学園への立ち入りを咎められたイヴは、部員の実園遥香と勝負をすることに。絹江は、もしイヴが勝てば、葵に会わせるという。やる気満々のイヴに、イチナがキャディーを買って出る!

公式サイトあらすじより)

 

1.陽の当たらない場所のキャディー

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イチナ「これで遅刻5回目。先輩方に怒られるッス……」
 
本作の主役は言うまでもなくイヴだが、この9話はもっぱら早乙女イチナという少女の視点で展開する話だ。彼女はイヴのライバルである天鷲葵も在席する雷凰女子学園のゴルフ部に所属し、下手なツアープロより儲かることもある一流のプロキャディーを目指している。……が、その夢は順調とは言い難い。
 

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イチナ(あの低く鋭い弾道、今まで見たこともない。ということはゴルフ部の人じゃない……!)
 
イチナはけして能力が低いわけではない。球だけを見てゴルフ部以外の人間のショットだと見抜く眼力があり、イヴの筋肉の具体的な長所を触って見抜くところからは豊富な知識も伺える。方向性は違うが、葵の専属キャディである雨音に比肩し得ることも示されているほど彼女は優秀だ。だが、むしろそれ故に・・・・イチナはキャディーになれない。
 

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遥香「ゲッ!って何よ。ゲッ!って」
 
イチナは他の選手に無視されているわけではなく、初登場の3話からキャディーになってほしいと誘われてはいる。同じ1年の実園遥香という少女で、まだレギュラーになってはいないが中学時代は全国3位の実力者だ。パートナーとしては申し分ない経歴の持ち主のはずだが、彼女に誘われてもイチナは首を縦に振らない。遥香の目標は葵の打倒と高いものだが、自分と組んだとしても彼女では葵に敵わないと分かっているからだ。
 

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イチナ「飛距離、正確性、パッティング。全てにおいて天鷲さんは遥香を上回ってる。わたしがキャディーをしても、今の遥香じゃ天鷲さんには勝てないッスよ」
 
イチナ遥香とのコンビでは、葵とそのキャディーである雨音への勝ち筋が無いのを見抜いている。自分達の球が先にカップに届くことはないと読み切っているのであり、いわば実際にゴルフをする前からキャディーの仕事を終えてしまっている。有能だからこそ、彼女は陽の当たる場所でキャディーをすることができていないのだ。
イチナがキャディーとして開花するには、自分と組むことで葵と雨音にも勝てるような強力なゴルファーを見つけなければならない。自分の助言が紙一重の差になって葵に勝てるようなパートナーを得て、初めてイチナはキャディーになることができるのだ。そのパートナーたり得る相手として出会った存在こそは本作の主人公・イヴであるわけだが――もちろん、彼女のキャディーになるのは並大抵のことではない。
 
 

2.キャディーの本分

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イヴ「キャディーなんか要らないんだけど……」
 
ここまでの9話、本作におけるキャディーの存在感はそれほど強いものではなかった。葵の専属キャディである雨音の直接的な助言が求められる場面はなかったし、イヴの相方だったリリィがしていたことは賭けゴルフの窓口役といった方が正しい。葵に会う条件として遥香との勝負をゴルフ部長の神宮寺から言われたイヴが、不慣れなコースであってもキャディーの必要性を感じないのは当然のことではある。それでも食い下がろうというのならイチナはキャディーとしての自分を、いやキャディーの必要性をイヴに刻み込まなければならない。
 

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神宮寺(情けない。2度のショットを見せつけられただけで心を乱すなんて)
 
イチナが見切っていたように遥香の実力は葵に遠く及ばず、当然イヴに敵うはずもなかった。イヴの放った2度のショットに突き放されて彼女の心は完全に乱れ、カップまでのライン読みはぼやけてしまう始末。U15女子世界選手権でイヴと同じ組になった選手のように、遥香の心はイヴに撃ち抜かれてしまったのだ。そしてそんな彼女を立て直したのは意外にも、対戦相手のイヴのキャディーになっていたはずのイチナの助言であった。
 

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イチナ「1個半左ッス」
遥香「え?」
イチナ遥香なら、6割の力で打てば入るッス」

 

カップに向かうためのラインはどれほどか、込めるべき力はいかほどか。イチナの助言を受けた遥香は、カップに向かって迷うことなくクラブを振るう。先程までは動揺して息を切らし、完全に自分を見失っていたはずの彼女がだ。ただ一言アドバイスしただけで、イチナ遥香を立ち直らせてみせた。
遥香の実力不足ゆえかあとわずかというところでショットが外れたとはいえ、この一事をもってしてもキャディーの重要性は確かに示せていると言えるだろう。キャディーにできるのはあくまで助言に過ぎないが、その言葉には100万の援軍よりも相手を勇気づける力がある。球を飛ばすべき道を見失った時、海を割るようにそれを指し示す力がある。
ゴルファーにとって、キャディーを信じることはその言葉に愚直になることだ。本作におけるキャディーの役割とは、ゴルファーに弾丸のようにまっすぐカップを目指させることにこそその意義がある。
 

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イチナ(これがわたしとイヴさんとの出会い。わたしが本当の意味でプロキャディーになる、始まりの日だったんス)
 
イヴの師であるレオや兄弟子のローズは前回、イヴにはまだまだ足りないものがあることを指摘していた。具体的にそれが何なのかはまだ明かされていないが、おそらくイヴはこの先何度もそうした不足に突き当たるだろう。イチナはその時、彼女が再びまっすぐ進めるよう支えられるキャディーとなれるのか。なぜか転入となった雷凰学園でのイヴの生活は、けしてアンダーグラウンドの世界に劣らない波乱万丈の日々となりそうだ。
 
 

感想

というわけでバディゴルの9話レビューでした。この作品にキャディーいる?というのは正直疑問だったのですが、意外と面白い役どころになりそうですね。人間関係としても、葵以外との関係はこれから築く必要のあるイヴにとってキャディーになり得る存在なのかもしれません。サトリナ演じる遥香がかませ犬になってしまったのはちょっと残念ですが。次回はまた新キャラも出るようで、今後が楽しみです。
 
 

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