まっすぐな物語――「BIRDIE WING -Golf Girls' Story-」6話レビュー&感想

©BNP/BIRDIE WING Golf Club
激突する「バーディーウィング」。6話ではイヴに選択の時が訪れる。今回彼女が問われるのは、異名通りの弾丸のような自分でいられるかどうかの覚悟だ。
 
 

BIRDIE WING -Golf Girls' Story- 第6話「反逆の狼煙」

スラムの再開発計画により、イヴたちの住む家が1週間後に取り壊されてしまうことが決まった。再開発計画は、以前イヴが関わったカトリーヌの賭けゴルフが引き金となっていた。カトリーヌは、イヴを専属の賭けゴルファーとして雇いたいと言っているらしい。仲間の分の移住資金を工面することは困難だが、カトリーヌを頼れば、新たな住処を得ることもたやすいだろう。しかしこのまま裏社会に関わってゆけば、葵との約束は果たせなくなってしまう。イヴが下した決断とは…?
 

1.最短のようで回り道

©BNP/BIRDIE WING Golf Club

©BNP/BIRDIE WING Golf Club
ローズ「そもそもの原因を作ったてめーがグダグダ言ってんじゃねえ!」
 
今回は敵味方の構図が激しく入り乱れる回だ。葵との勝負をさせてもらった借りを返すため4話で賭けゴルフをし見事勝利を収めたイヴだったが、賭けの対象となったカジノ建設用地にはなんと自分の家が含まれていた。仲介したローズになぜ教えなかったのかと問い質しても、葵との勝負のためならなんでもやるという約束を突き付けられれば返す言葉がない。4話ではイヴと立つ側を等しくしていたローズ、そして不動産王にしてマフィアとも繋がりのあるカトリーヌは今回彼女の敵に回っている。
 

©BNP/BIRDIE WING Golf Club
ローズ「そういや、マダム・カトリーヌがお前を賭けゴルフの専属したいと言ってたな……引き受けたらお前と仲間の住む場所くらいは用意してもらえるんじゃねえか」
 
今の家を追い出されれば、合法的にこの国で暮らしているわけではない自分達はやっていけない。窮地に陥ったイヴにしかし、打開策がないわけではない。カトリーヌはイヴを専属の賭けゴルファーにしたいと考えており、彼女に忠誠を誓えばそれだけで生活を保証してもらえるだろう。最短でカップを狙う・・・・・・・・・というなら、これこそ一番の近道と見ることもできる……だが、それはイヴにはできない。
 

©BNP/BIRDIE WING Golf Club
ローズ「奴はエサ欲しさにしっぽを振るような、そんなタマじゃありません。売られた喧嘩は必ず買う、そして私達は既に奴に喧嘩を売っています」
 
これまでも描かれているように、イヴは強引であっても卑劣ではないし、他人に魂を売ったりはしない女だ。強烈なショットで相手のメンタルをへし折りはしても道具で妨害したりはしないし、雇い主やマフィアに対してもへつらったりしない。最短でカップを狙う彼女の姿勢とは誰に対しても、何に対しても自分を曲げないまっすぐさに由来しているのだ。例え選択として正解であっても、まっすぐさを失えば彼女は弾丸たり得なくなってしまう。
 

©BNP/BIRDIE WING Golf Club
イヴ「あがいてやるわ、徹底的に!」
 
カトリーヌに膝を屈することは最短のようでいてその実、障害物をへろへろとかわす遠回りでしかない。専属賭けゴルファーとなれば裏の世界にどっぷり両足を突っ込むことになるとローズは語るが、この底なし沼こそは回り道の具現と言えるだろう。だからイヴにそんな選択肢はありえないのである。
 
 

2.まっすぐな物語

©BNP/BIRDIE WING Golf Club
カトリーヌ「やっぱり。小娘、この私に楯突いたこと絶対に後悔させてあげるわ」
 
イヴの立たされた岐路がそうであるように、人は最短距離を――いや近道をしようとしてかえって道に迷ってしまうことが珍しくない。道に迷うとは今自分がどこにいるか分からなくなることであり、つまり自分を見失うことだ。逆に言えば、自分を見失わない限り人の歩みは目的地へまっすぐ・・・・続いている。傍からはどれだけ遠回りや曲がりくねった道に見えようと、だ。
 

©BNP/BIRDIE WING Golf Club
イヴ「後悔はしない、する必要もない」
 
イヴは自分を曲げない。カトリーヌとカジノ建設の利権を争ったマフィア・ニコラスが敗北を受け入れずあらゆる手段を用いて再び賭けゴルフに持ち込んだのに乗じ、4話で負かした賭けゴルファー・ヴィペールと共に今度はニコラス側で超高レートの勝負に臨む。敵味方の激しい入れ替わりの中にはイヴ自身も含まれているわけだが、彼女はむしろそれによってまっすぐ自分を貫いている。今回ニコラスが仕組んだ暗殺等の卑怯・卑劣な行動がマフィアとしてはむしろ正統なものであるように、まっすぐさとは実は表面的な一貫性からは離れたところにこそあるのだ。そして、このまっすぐさはイヴだけの専売特許ではなかった。
 

©BNP/BIRDIE WING Golf Club
ローズ「やはりオレ達は戦う運命だったようだな」
イヴ「そう仕向けたのはあんたでしょ」
ローズ「そうだ。だから後悔はしない、する必要もない」

 

イヴの前に姿を現した勝負の相手。それはなんとローズであった。これまでイヴに味方したかと思えば利用し今回は突き放し、狙いの見えなかった彼女の目的はイヴとの人生を賭けた勝負にこそあった。あまりにも遠く曲がりくねったこの道を、しかしまっすぐにローズは歩き続けていたのだ。この対決はまっすぐに進む二人の必然的な激突であり、ローズが言うように運命と呼んで差し支えないものだった。
 

©BNP/BIRDIE WING Golf Club
イヴは言う。自分が知っているのはゴルフだけであり、全ての道はゴルフで切り開くしかないと。不器用な彼女にとって、ゴルフとは自分をまっすぐ歩かせてくれるたった一つの手段にほかならない。ならばゴルフに対してまっすぐであり続ける限り、その人生もまたけして曲がることはないだろう。
 

©BNP/BIRDIE WING Golf Club
イヴ(何が来ようとも撃ち抜く。わたしの虹色の弾丸、レインボー・バレットで……!)
 
"レインボー・バレットのイヴ"の異名は技ではなく、生き様を表すためにこそある。イヴにとってゴルフとは、己が身を弾丸に変えるまっすぐな物語なのだ。
 
 

感想

というわけでバディゴルの6話レビューでした。イヴの不器用なまっすぐさを軸に書きましたが、これ多分ローズの不器用さも相当なものですね。目的も今回明かされたもので終わりではないだろうし。次回はハンカチを用意した方がいいのかも……ヴィペールの名バイプレーヤーぶりやイヴの過去の秘密など、次回や今後への期待がますます高まる回でした。
 
 

<いいねやコメント等、反応いただけるととても嬉しいです>