気持ちと魔法とーー「幻日のヨハネ」11話レビュー&感想

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霧に覆われる「幻日のヨハネ」。11話では異変の再発にショックを受けたヨハネのために皆が奮闘する。再起に必要なのは、魔法の再発見である。

 

 

幻日のヨハネ -SUNSHINE in the MIRROR- 第11話「ヨハネのまほう」

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1.二重の霧

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再びヌマヅの町に起きる黒い霧。幸い直接的な被害は出ていないものの、ヨハネは自分は何もできていなかったと落ち込んでしまい……
少女が道を探す「幻日のヨハネ」。夏祭りで収まったかと思われたが今度は郊外どころか町にも発生し、黒い霧に覆われてしまったヌマヅ。ただ、この11話はそれによって町が破壊される様子を描いたりするわけではない。直接的な被害が出ていないこともあって、スポットライトはむしろヨハネの落胆の方に当てられている。

 

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ヨハネ「わたしは……何もできない……!」

 

ヨハネにとって、夏祭りでの歌唱は己に自信を持たせてくれる出来事だった。自分はやはり歌が好きなんだということ、歌で町の異変を鎮める成果を出せたこと……そしてもう一つ重要なのは、ハナマル達と一緒に9人で歌ったこと。お菓子作りを始めそれぞれにやりたいことを見つけている仲間達と共に歌ったヨハネは、自分は彼女達と並び立てるんだと自信を持つことができたのだ。並び立つと書くと対抗意識のようだが、ヨハネからすれば皆と一緒にいていい資格証明(=魔法)をもらったような気分だったのだろう。故に、この異変の再発は町を不穏にするだけでなくヨハネの自信を大きく損なわせてしまった。

 

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ヨハネ「皆に会いたくないのは、合わせる顔が無いから」

 

劇中で言われるように、異変の発生はヨハネと何の関係もない。責任もない。だがこの事実の指摘は無意味だ。ヨハネには「異変に実は何も対処できていなかった」事実が重大なのであり、そして彼女は何もできなかった自分にもはや自信を持てない。皆と違ってやっぱり私は駄目なんだと、そう思わずにいられない。ヨハネは皆と仲良くなる度に印の増えた不思議な杖を「わたしは何もできない」と投げ捨ててしまうが、これは皆と一緒にいる資格なんて自分にはないと思い詰めてしまったためだ。黒い霧はヌマヅの町だけでなく、ヨハネの心も覆って外界との繋がりを閉ざしてしまっているのである。

 

 

2.気持ちと魔法と

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ヨハネの心には黒い霧がかかっている。それを晴らすのに必要なものは何か?と言えば、ヒントとなるのは彼女の相棒の狼獣・ライラプスの台詞だ。彼女はヨハネが投げ捨ててしまった杖を探し川に飛び込むが、その際「ヨハネに魔法を、絆を取り戻させてあげないと!」と心の内で語っている。絆とは繋がりであり、すなわちヨハネが見失ってしまったところの「皆と一緒にいる資格」だ。彼女の心の霧を晴らすには、自分は皆と一緒にいていいんだと再び思わせられればいい。そのきっかけとなったのは、9人の1人にして旅館の娘であるチカが考案した「ヨハネちゃんを励ます会」であった。

 

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チカ「ヨハネ様御一行、十千万旅館にご招待します!」

 

ヨハネちゃんを励ます会」……なんともそのままの名前だが、チカの考えは筋が通っている。というより繋がっている。ヨハネはオーディションを受けに行く彼女のための「ヨハネさんいってらっしゃいパーティ」が黒い霧によって中断させられたことで自信を失ったのであり、その続きであるこの励ます会は元気だった頃のヨハネと今のヨハネを繋ぎ直すものだからだ。

 

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ヨハネ「わたしには、皆の優しさを受け取る資格なんてない」

 

チカの旅館に招かれたヨハネはハナマル達の歓待を受け、その心遣いに感謝するも心苦しさから逃れられない。こんなに優しくしてもらう理由が、資格が自分にあるとは思えないからだ。黒い霧を晴らせなかった自分が空っぽにしか思えないからだ。けれどチカはヨハネが異変を沈められなかった事実を否定するのではなく、もう一つの事実を告げる。彼女は夏祭りで一緒に歌ったあの時、ヨハネに憧れを感じていたのだと。あの時のヨハネはキラキラして眩しかったと。自分は旅館で働くのが大好きだけど、あの瞬間は皆とずっと一緒に歌っていたいと思えたと。

 

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チカ「わたし、この旅館で働くのが大好きだし、これがわたしの仕事だって自信持って言える。だけどあの日、この皆でずっと歌ってたいなって……そう思ったよ」

 

ヨハネは、異変を鎮める「魔法」が使えなければ自分には皆と一緒にいる資格などないと思っていた。だから黒い霧の再発で悲嘆にくれてしまった。けれど異変を鎮められなくても、一緒に歌ったその時既にチカはヨハネに魅了されていた。友達だと、力になりたいと、そう思うようになっていた。魔法とは不思議だから魔法なのだが、そんな風に何の見返りもないのに一緒にいたい気持ちほど不思議なものなどあるまい。本当はヨハネは、ずっと前から皆を魔法にかけていたのだ。

 

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人の心はままならない。関係ないことで落ち込みもするし、割に合わないのに他者のために命を張ったりもする。けれど、人と人の関係とは良くも悪くもそういうものではないか。魔法のように不思議なこの気持ちあればこそ、私達は誰かと一緒にいられるのである。

 

 

感想

というわけで幻ヨハの11話レビューでした。主人公から主人公への最高のエールだったなと思います。メタ的な話を除いても、これはチカでなければ務まらない役回り……さて、本作もあっという間に残り2話。果たしてライラプスはどうなってしまうんでしょう。笑顔で最終回を迎えて欲しいなあ。

 

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