封鎖の魔術――「魔法使いの嫁 SEASON2」13話レビュー&感想

©2022 ヤマザキコレ/マッグガーデン魔法使いの嫁製作委員会

閉じ込められて始まる「魔法使いの嫁 SEASON2」。13話ではカレッジの封鎖によりチセ達の状況にも変化が訪れる。封鎖は、制限は人を不自由にするとは限らない。

 

 

魔法使いの嫁 SEASON2 第13話「Nothing venture, nothing have.I」

mahoyome.jp

 

1.もたらされる制限

続発する事件に対し、学院長ライザはカレッジの封鎖を決定した。物理的・魔術的に閉じ込められることとなったチセ達は翌朝、鍛錬場への集合を指示され……?

 

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アルキュオネ「閉じ込められました」

 

3ヶ月を置いて放送再開となった「魔法使いの嫁 SEASON2」。学院篇たる本章第2クールは引き続きカレッジ(学院)を舞台としているが、その状況は1話と大きく異なっている。盗まれた魔術書によって生徒や教師の中に継続的に魔力を奪われ続ける者が見られ、加えて生徒の親族も襲撃を受ける不穏な状況を鑑みてカレッジが封鎖されたためだ。ケット・シーの魔法で行われたこの封鎖は正面からは何者も寄せ付けない強固なもので、事情を知らずに主人公のチセに会いに来た風の妖精エアリアルはもはや入ることは叶わず、逆に学園を訪れていた人造精霊のアルキュオネは中から出ていくこともできない。

 

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ザッケローニ「俺の使い魔を壊せたら晴れて合格だ」

 

外部との接触を閉ざす封鎖は、自然様々な制限を伴う。翌朝鍛錬場へ集められたチセのクラスメイト達はスマホも通じなくなっていることに気付くし、そこで彼女達が受ける新たな授業とは臨時講師として現れた魔術師ザッケローニの使い魔を「魔術を使わず、武器に変化する粘土で」倒すというものだった。生徒達の中には道具を使うより作る方が得意なアイザックのように戦いに向かない者もおり、そんな人間も戦闘訓練を受けさせられるのはこれまた制限と言えるだろう。ただ、この制限は必ずしも不自由だけをもたらしていない。

 

 

2.封鎖の魔術

制限は不自由だけをもたらすとは限らない。これを考えるにあたって参考になるのは、チセの師にしてカレッジの臨時講師となっている魔法使い・エリアスと教師の一人シメオンのやりとりだ。

 

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エリアス「あれは知人じゃなかったんだな……」
シメオン「ははっ、面白い友達ができたなあ」

 

エリアスは特殊な出自から人付き合いに対する知識・感覚が乏しく、「友人」というものについてもよく分かっていなかった。シメオンとはそうなれるのではないか、と抱いていた期待は今回叶うのだが、その呆気なさにエリアスは驚きを隠せない。魔力を奪われ病床に伏していたシメオンは見舞いに来てくれたエリアスを良き友人と呼んでくれたのだが、エリアスは「友人」がそんな簡単になれるものとは考えていなかったためだ。ちょっと気にかかるようならそれで十分友達だ、と返されたエリアスは自分の交際関係を思い出し、自分には既に他に4人の友人がいたことを認識する。

 

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シメオン「心配したり気にかけたり、なんてことなく思い出したり。俺はもう、それだけで友達だと思うけどな。嫌いな奴はざまあみろって思うからね」

 

シメオンの言葉からエリアスが受けたのは「制限」である。シメオンに具体例を示された結果、不定形だった友人の概念に形が与えられた――制限されたのだ。しかしこれが不自由をもたらしているかといえばもちろん否で、エリアスはそこからシメオン以外の友人まで発見した。ここでは制限がかえって自由をもたらしたのである。

 

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ザッケローニ「魔術を使おうが武器を使おうが、逃げるでも反撃するでも、何かあった時にどうにかするのは自分だ。どう生き残るか考えろ。……そして絶対にためらうな」

 

制限は不自由だけをもたらすわけではなく、時には逆に自由を呼ぶ。例えばザッケローニの授業に話を戻せば、彼の指導は単に生徒達の戦闘能力を高めるようなものではなかった。むしろ模擬戦を通して自分が戦いの時に魔術を使えるような力量を持っているか、そもそも戦いに向いているかどうかを認識させ、逃げることも選択肢に入れさせることにその趣旨はあった。ザッケローニは魔術を制限した戦いによって生徒達を、「襲われたら魔術で反撃する」固定観念から自由にしたのだ。更に言えば暴力を厭わないザッケローニは目付役の教師ヴァハマンから何度か制止を受けているが、これなどはヴァハマンという制限が本来教師向きでない者に教育をさせる自由を引き出しているとも言える。

 

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アイザック「……フィロメラはすごいね」

 

自由と不自由――制限は一対であり、不自由なきところに自由は存在しない。枠がないだけの状態など、自由も不自由もない混沌でしかない。その点で、学園の封鎖がもたらす制限はチセ達にまた新たな可能性をもたらしていくことだろう。生徒の一人フィロメラなどは祖母リズベスの命に身も心も縛られていたが、その手の届かぬ学園に閉じ込められた今の彼女は少しずつ檻の外の世界を知り始めている。

 

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ライザ「現状を鑑み、当職は本校が重大な危機に瀕している可能性があると判断しました。よって本校生徒および関係者の安全を図るため、この度カレッジを当該事案が解決されるまでの間物理的、および魔術的に封鎖いたします。」

 

ライザの今回の処置は犯人が外にいるか確かめるためのものだろうとエリアスが推測しているように、封鎖という制限はそれ自体を直接目的としているとは限らない。制限から生まれる自由を見出すところにこそ、封鎖の魔術の真価は潜んでいるのである。

 

 

感想

というわけでまほよめアニメ2期13話のレビューでした。1クール目はだいぶ手こずった感があったのですが、差し当たり今回はすんなり書くことが決まって一安心。魔法なき世界の魔法を描いた「幻日のヨハネ」を前期見たことが後押しになってくれているのかもしれません。

 

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ヴァハマン「授業は終わりです。授業方針について少し話し合いましょう」
ザッケローニ「だから痛ぇってば。ほんと馬鹿力だよあんたは」

 

12話では険悪そうに見えたヴァハマン先生とザッケローニが急にいいコンビに見えてきて困る。二人とも単独の時とはちょっと空気が違っていて、これも一人より二人の制限がある時の方が自由という例なのかも。次回からの話にもドキドキです。

 

 

 

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