【ネタバレ】時は絶対なり――「ガールズ&パンツァー 最終章」第4話レビュー&感想

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戦車が時を超える「ガールズ&パンツァー 最終章」。第4話では大洗vs継続、黒森峰vs聖グロリアーナの2つの試合が描かれる。決勝進出をかけた戦いから見えるのは、時間の絶対性である。

 

 

ガールズ&パンツァー 最終章 第4話

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1.一番の危機は

冬季無限軌道杯準決勝が始まった。フィンランド系の戦車を操る継続高校との試合に臨む大洗女子学園だったが、開始早々に実質的な隊長であるみほの車両が撃破されてしまい、大ピンチに……!?

 

全6話のOVAも後半戦となった「ガールズ&パンツァー 最終章」。4話の継続高校戦では主人公であるみほ達のIV号戦車D型が撃破され大洗高校の面々は動揺を隠せないが、みほ達の撃破自体はこれが初めてではない。知略自慢の彼女のこと、これまでも自分の戦車を囮にしたり決め手を仲間に委ねて撃破されるケースは珍しくなかった。にも関わらず今回大洗に動揺が走るのは、それがあまりにも試合開始早々であったゆえ――時間的問題ゆえだ。

 

「時は金なり」の金言もあるように、時間は重要である。包囲された大洗は塹壕に加えて地下トンネルへの道を掘るなどして脱出を図るがそこではいかに短時間で掘るか、狙いをいかに長時間ごまかすかが重要になってくるし、IV号を狙撃する大金星を挙げた継続の隠し玉であるヨウコは移動しながらの射撃が苦手=正確な射撃に時間が必要という弱点を抱えていたりする。激しい傾斜や雪崩によって戦車が加速する状況や、みほに加えて3年生も撃破された状況で1年生の澤梓が次期隊長に相応しい資質を見せる点などからも時間の要素を見出すことは可能だろう。最終的に大洗を勝利に導いたのもまた、継続のミカが搭乗するフラッグ車に相手が雪像に潜んでいると誤認させたことで稼いだ一瞬の隙=時間であった。

 

学生のスポ根ものの要素も持ち合わせる本作において、時間の問題は避けては通れぬ壁である。そもそもがこの無限軌道杯にしても、みほ達の参加目的は3年生の河嶋桃の推薦入学枠の獲得にあった。そのように考えた時、4話のもう一つの試合でも時間の問題は浮かび上がってくる。

 

 

2.時は絶対なり

準決勝を描くこの4話では、大洗と決勝を争う相手を決めるもう一つの試合も60分の中に収められている。みほの姉まほの留学により逸見エリカが新たな隊長となった黒森峰女学園と、みほ達大洗相手には負けたことのないダージリン率いる聖グロリアーナ女学院の戦いだ。エリカはまほの跡を継いだ重みからようやく抜け出し急成長を遂げている侮れない相手だが、一方のダージリンはといえば次期隊長と見込んでいるオレンジペコに指揮経験を積ませることを重んじるなどその態度は落ち着いたものだ。先の継続高校戦での澤梓の活躍は人手不足の状況から急造で生まれたものであったが、彼女はそうした先のことを最初から織り込んでいるのである。

 

本来なら敵から丸見えになる高所への登攀が砂煙で隠れるという時宜にも恵まれエリカは食い下がったものの、黒森峰は最終的に2秒の差で先にフラッグ車を撃破され敗退することとなった。フラッグ車を撃破したのは自校も同様なのだからエリカとしては悔しくてたまらないところだが、わずかな時間差であっても早かったのは相手の方なのだから文句のつけようがない。大洗と継続、黒森峰と聖グロリアーナの試合は場所も展開も大きく異なっているが、ただ一つ時間が勝敗を分けた点だけは共通していた。

 

かくて進出校が出揃い、無限軌道杯決勝戦は大洗と聖グロリアーナの因縁の対決を迎えることになる。聖グロリアーナも全国大会ではまほ率いる黒森峰に敗北を喫するなど無敵というわけではないが、この4話で描かれたものからすれば確かに最後の相手に相応しい。準決勝での戦いぶりから見えるように、時間の流れを必死にかいくぐってきた大洗に対し聖グロリアーナのダージリンはほとんど時間を支配しているからだ。だが、そこには付け入る隙もまた見え隠れする。

 

この準決勝では聖グロリアーナに新たに加わった戦力が登場する。それはなんと、「ガールズ&パンツァー 劇場版」で大学選抜チームを率いてみほと激闘を繰り広げた天才少女、島田愛里寿であった。飛び級生である彼女はみほよりも幼い若干13歳であり、この点でもダージリンは未来を見越しているように思える。おそらく決勝は、みほと愛里寿の再戦は今の3年生が卒業した後の高校戦車道を占う試金石ともなるだろう。……だがそれは、逆に見ればダージリンが自分を「過去」に押し込めようとしているとも言えまいか。今、この無限軌道杯で隊長を務めているのは3年の彼女であるにも関わらずだ。どれだけ知略と技量に優れていようと、それは貪欲に勝利を求める姿勢からは一歩離れてしまっている。

 

人は過去の上を生きているし未来に向かわなければならないが、私達が生きるこの時は何があろうと現在だ。果たしてみほは、紅茶を欠かさぬダージリンから過去に潜む余裕を剥ぎ取ることができるのか。絶対なる時の下、二人が対峙するところに最終章の名に相応しい激闘は待っているのである。

 

感想

というわけでガルパンの最終章4話レビューでした。つ、疲れる回だった……パンフレットで水島努監督が書いているように今回はほとんどが戦闘シーンで、しかも雪山を猛スピードで戦車が滑っていくのでジェットコースターに乗ったままのような目の休まらなさ。だからこそ見応えは抜群でしたが。合間には試合後の大洗と継続がサウナなどで交流する様子が描かれますが、死力を尽くして戦った相手とも試合の後は仲良くできるのも時間のなせる技かしらん。

これまでは1つの試合を次回に持ち越して引きとしていましたが、これで決勝は60分2話を使ったたっぷりしたものに。どんな試合が繰り広げられるのか、次の上映を楽しみに待ちたいと思います。

 

 

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