試される肝――「魔法使いの嫁 SEASON2」16話レビュー&感想

©2022 ヤマザキコレ/マッグガーデン魔法使いの嫁製作委員会

一人を決める「魔法使いの嫁 SEASON2」。16話では肝試しが催される。だが、試される肝は度胸とは限らない。

 

 

魔法使いの嫁 SEASON2 第16話「Needs must when the devil drives.Ⅱ」

mahoyome.jp

 

1.ペアの化学反応

チセの話を聞いたヴァイオレットの提案により、肝試しを行うこととなった学生達。くじ引きで決まったペアは道中、様々に言葉をかわし……

 

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ヴェロニカ「ひどい話でしょう? あの子以外は悪人しか出てこないんじゃ、寝物語にはならないわね」

 

夜を歩む「魔法使いの嫁 SEASON2」。16話では肝試しを通して様々なペアが描かれる。ゾーイとルーシー、チセとヴェロニカ、リアンとヴァイオレット、フィロメラとアイザック……普段は見られない組み合わせも多く、そこから生まれる化学反応が中心の回とも言えるだろう。

 

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アイザック「君に投げられたような言葉も、ちょっとだけ経験してる」

 

化学反応の一つとして挙げられるのは、全く異なって見える者達の意外な共通点だ。例えばヴェロニカの昔話から伺えるような、魔術師の末裔誰もが受ける家からの束縛。例えばアイザックがフィロメラを何かとかばう理由である、彼女同様に感じているリアンへの劣等感……本作の舞台であるカレッジが魔術師のための施設とはいえ間違いなく学校であるように、異なるものでも何かしら通底するものがある。共通点の描写からは16話はそういう話のようにも見える。ただ、これはあくまで化学反応の一つに過ぎない。

 

2.試される肝

今回の話から見える化学反応は一つではない。いや一方向・・・ではないと言った方が正確だろうか。そう、ペア達は相手や他者との共通点と同時に、正反対の決定的な差異もまた覗かせている。

 

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フィロメラ「うん……まっすぐで、人の裏を見るのが得意じゃなくて。嫌になる」

 

例えばアイザックは先に触れたようにフィロメラに劣等感を抱く者同士として共感しているが、一方で自分と彼女の言葉を同格としては扱わない。幼少期にリアンの目標だったフィロメラと違って、ライバルでもなんでもない自分の言葉が響かないことを彼はよく知っているのだ。また二人はリアンのまっすぐさ故の考えの固さについて同意こそしたものの、そんな彼についての思いは「だけどいいやつだから全部は嫌いになれない」「(おそらく自分が)嫌になる」と対照的な表現となった。アイザックはフィロメラに対しても自分がリアンのライバルになれないと感じたのだろうし、気持ちのかなりの部分が重なっているとしてもそれはかえって差異を決定的にすらするのである。

 

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リアン「……お前は、俺と同じ立場なのにそんなことまで考えてるのか」
ヴァイオレット「お前が考えてなさ過ぎるの! 面倒を見てるアイザックは賞をもらうべきね!」

 

またリアンは「不器用な自分ができることは他者もできる」という考え方の問題点を今回認識するが、それは己の思考の高慢さを指摘したのがヴァイオレットだからという点が大きい。自分と「同じ」魔術師の名家の長男の彼がしかし、自分と「違って」幅広い人のありようまで想像している事実がリアンの中で説得力を持ったのだ。悲しいかな、前回同じ問題を指摘したはずのアイザックの言葉は、彼自身がフィロメラに語ったようにリアンに(ショックこそ与えても)何も響いてはいなかった。

 

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喜ぶべきか悲しむべきか、どれだけ近い存在でも私達は他者と完全な一致を見ることはない。ヴェロニカのリッケンバッカー家のように一族内ですら殺し合いは起きるし、ヴァイオレットと妹のジャスミンは共に異性の服を身にまとっているが、前者は単なる趣味の一方で後者は兄の代わりになるよう求められた結果に過ぎなかったりする。ただ、こうしたものがなく完全に一致すれば幸せかと言えばそれも誤りだろう。

 

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幼少期のヴェロニカは付き人候補として3人の少年を提示された際、彼らを一顧だにしなかった。従者であるサージェント家のリズベスは3人とも同程度に付き人の条件を満たしていると考えていたが、ヴェロニカからすれば彼らはどれも代わり映えしない存在――完全に一致する存在でしかなかったのである。そして彼女が代わりに選んだのは、リズベスからすれば未熟で候補とは一致するところゼロのはずのフィロメラであった。
「これはお願いではないの」と2度も語って強引に従者にした点からも分かるように、ヴェロニカにとって自分と同じように家の檻に囚われたフィロメラだけは他の候補と一致するところがなかった。そう、完全に一致しないが故に「かけがえがなかった」のだ。

 

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アイザック(ほんと……変にまじめで、鈍いやつ)

 

人には考えを改めるのとは別の次元で変えられない、かけがえない領域が存在する。再びアイザックと話し合ったリアンにしても、自分の高慢さは改めようとする一方、ヴァイオレットからも説教されたと馬鹿正直に話してしまうところは相変わらずだった。思い込みは捨てられても頑なな真面目さと鈍感さだけは捨てられなかったわけだが、つまりそれこそがリアンが絶対に他者と一致できない部分、かけがえのない部分だったとも言える。そう、今回の話はリアンがリアンであるために絶対に捨てられないものを問う回でもあった*1

16話は肝試しの回であるが、ここで試されたのは度胸ではない。一人の人間が一人の人間であるための鍵こそ、今回本当に試された「肝」なのだ。

 

 

感想

というわけでアニメまほよめ2期16話レビューでした。更新遅くなってしまいすみません。ゴールは設定できているのに全然たどり着けない、というか走り出すことすらできなくてですね。書き出しを10回くらいやり直してようやくルートを見つけられました。疲れなのかなんなのか、とにかく月曜までちゃんと休みたいと思います……

 

今回は鈍感さだけはリアンと変わらない私のような人間としては耳が痛い回でした。こういうのって一生付き合わないといけない点では開き直らないといけないし、直らないなりに他者とのすり合わせ方を考えなきゃならない点では開き直ってはいけないので本当に難しい。そこで上手く嘘をつくのって、ほとんど魔術じゃないかという気もします。

 

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レビューでは触れられなかったですが、ルーシーがなんだかんだチセ達を替えの効かない相手と認識してるのがなんというかこう、ゾーイ頑張れという気持ちになります。さてさて、次回は再びチセが魔法を使うのかな。

 

 

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*1:これはヴェロニカに、どうして全然関係ない狭く閉じた世界に住むフィロメラの事情に首を突っ込むのか問われたチセが突きつけられている問題でもある