灯りへの近づき方――「星屑テレパス」7話レビュー&感想

©大熊らすこ・芳文社/星屑テレパス製作委員会

目標への「星屑テレパス」。7話では彗に憧れる海果のリーダーへの道のりが描かれる。憧れに、灯りに近づくにはどうしたらいいのだろう?

 

 

星屑テレパス 第7話「大胆リーダーシップ」

hoshitele-anime.com

 

1.海果のリーダーシップ

先日のイベント以来、竜岡科学技術高校の宇宙研究開発部部長・秋月彗がすっかり憧れとなった海果。とはいえ(彼女の中の)彗のようなリーダーへの道は遠く険しく……?

 

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海果(秋月彗さん……竜岡科学技術高校の部長さん、かっこよかったなあ)

 

星を目指す「星屑テレパス」。7話冒頭の海果はぼうっとしている。理由は単純で、前回イベントで出会った秋月彗の存在が脳裏に強烈に焼き付いていたためだ。ひょんなことから知り合った人が前回のモデルロケット選手権優勝校の部長で、自分達がようやく学び始めたモデルロケットを天高く飛ばしているとなれば憧れるのも無理はない。設立したばかりの同好会に過ぎないとはいえ一応その会長である海果にとって、彗は組織のリーダーとしての目標、ロールモデルになっていると言える。

 

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瞬「だー! こんな自信なさげな言い回しじゃ周りの奴らにナメられるだろうが!」

 

「彗のようになりたい」……とはいえこれは海果にはなかなか高いハードルだ。あがり症の彼女は前回のイベントでの彗のような堂々と話すことはできないし、ロケットについての知識はまだ初歩の初歩。本物を作るロケットよりは現実的かもしれないが、海果にとって彗もまた遥かに遠い目標なのは変わりない。しかし彼女がロケット研究同好会の会長に、リーダーにふさわしくないかと言えばそれは誤りだ。

 

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海果「ぜ、ぜぜ絶対に、優勝、します!」

 

例えば部長会で行うロケット研究同好会の活動内容の説明の際、海果は自分だけで考えた原稿では「いずれ」「いつか」と活動に対して弱気な表現しかできなかったが、メンバーのユウに遥乃、瞬の手直しを受けた後は次のモデルロケット選手権での優勝すら自分から誓った。途中までは他の皆に引っ張ってもらったものの、最終的にはむしろ皆が原稿に直接は盛り込めなかったところまで同好会を引っ張ったのだ。

 

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瞬(どうかしてる……!)

 

また海果はモデルロケットの実製作も得意とは言えず、選手権参加のためのライセンス取得にもずいぶん手間取ったが、そんな彼女は今回瞬に「(選手権に)わたしが勝たせてやる」と強く決意させてもいる。普通の人ならお世辞でしか言わないようなことをつっかえつっかえ真っ赤になって、しかし本気で口にする海果に瞬は強く強く惹きつけられている。

 

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海果の一見するとリーダーらしからぬ姿は、実のところ彼女のリーダーシップの源泉になっている。リーダーから「遠い」はずなのに「近づいて」いる、と言ってもいいだろう。素直になれない瞬の憎まれ口がかえって好意や感謝の現れであるように、世の中には案外こうした距離の不思議があふれている。

 

2.灯りへの近づき方

遠いから離れているとは限らない。距離の不思議は逆もまた同様である。すなわち、近いから近づけているとは限らない。

 

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海果「ち、知識が一番あるのは雷門さんだし、設計はとりあえずお願いしようと思います。二人もそれでいい……?」

 

今回の後半、瞬は選手権で勝つためモデルロケットの設計や製作指揮は全て自分に一任するよう海果に求めた。実際、もっとも簡単な4級ライセンスを取得したばかりの海果達と、もともと機械製作を学んでいた瞬の間には比べ物にならない差がある。リーダーらしく一番合理的な判断をしろ、という瞬の言い分はもっともで、つまりこの場合は彼女の言う通りにするのが一番リーダーに「近い」。しかしそれを受け入れる海果の姿は弱々しく、むしろリーダーから遠く「離れた」ものであった。

 

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ユウ「海果がどんなに消そうとしたって、それが海果の灯り。一緒に歩くにはこれ以上無い道標だね!」

 

瞬の主張は理に適っていると知っているから、海果はそれを覆そうとはしない。ユウと二人の帰り道でもリーダーらしくあろうとなんでもないふりをする。けれど、彼女と帰る中で次第に出てくるのはリーダーらしくない自分への思いだ。自分は彗のように堂々としていないしロケット作りの役にも立てない。皆で最高のロケットを作るのでなければ一緒に宇宙を目指すユウとの約束を果たすことにもならない。違う話題だったはずなのに、こんなことを言える立場ではないのにと考えていてもそうした気持ちは海果の中からあふれてくる。遠ざけているはずなのに近づいてくる。そして、ユウはそんな海果の気持ちを否定しない。消そうとしても消えないそれが海果の灯りであり、私達が一緒に歩くのにはこれ以上ない道標だとすら言う。「灯り」「道標」……抽象的な表現だが、これには海果が囚われていた「リーダー」への思い込みを解きほぐす力があった。

 

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海果「わたし、やっぱり欲張りなのかな」

 

海果の灯り、道標。それは彼女が目標に向かって最短では走れないからこそ宿せるものだ。どんくさくて不器用な海果はすぐにつまづくし、望んだものをすぐ手に入れることもできない。けれど、成功と失敗や近づくのと遠ざかるのが常に一緒にある海果の瞳には、成功したり近づくばかりの人には叶えるどころか見ることすらできない願いが映っている。願いを照らす”灯り”が宿っている。ある種の欲張りだけが持てるその灯りは、願いを照らすだけでなく人を引き付けもするものだ。そう、例えば海果が彗に憧れを感じたように。ユウや瞬達がそれぞれの形で海果をリーダーだと感じているように。

 

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灯りに近づきたいのなら、彼方に見えるそれに手を伸ばすだけでは届かない。自分の中の灯りという、一番近くて遠いキラキラしたものとおそろいでなければそれは手に入らないのだ。

 

 

感想

というわけで星屑テレパスのアニメ7話レビューでした。とにかく今回は後半をどう受け止めるかが難しい。書き進めていく内に拾えることに気付いたワードも多々あります。クレーンゲームのくだりも含められればよかったのですが。

 

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現時点での話なのかもしれませんが、瞬の態度を「ツンデレ」と劇中では形容しないのが好き。さてさて、副題から次回はパワフルな「打ち上げ」が期待できそうです。

 

 

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