新しさとの距離――「星屑テレパス」6話レビュー&感想

©大熊らすこ・芳文社/星屑テレパス製作委員会

新星の「星屑テレパス」。6話では海果達に新たな目標ができる。新しさは遠くにあるとは限らない。

 

 

星屑テレパス 第6話「乾杯イニシエーション」

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1.新しい日々、新しい海果

部ではなく同好会としてだが、ロケット研究活動の承認をもらった海果達。近々モデルロケットのフェスがあると聞きつけ向かった先では、思わぬ再会が待っており……?

 

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海果「わ、わたしはいいと思う、同好会!」

 

新天地を目指す「星屑テレパス」。6話では遂にロケット研究部の活動が始まる!と思いきや、海果達を待っていたのはつまづきであった。担任の笑原先生が尽力してくれたものの、海果達の活動は同好会としてしか承認されず部費や部室などは獲得できなかったのだ。

モデルロケットの製作費を得るため部活動を申請した海果達にとって、これは大いに当てが外れた結果と言ってよい。とはいえ海果はめげなかった。実績不足が却下の理由と言うなら、同好会の活動を続ければいずれ認めてもらうこともできる。皆とやってみたい……彼女の呼びかけにユウ、遥乃、瞬の3人は引っ張られるようにして気持ちを切り替え、ロケット研究部あらためロケット研究同好会は活動を開始することとなった。

 

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瞬「一理、なくもない……ま、会長様が言うならしかたねーわ」

 

自分では意識していないだろうが、この時の海果の行動は集団のリーダーに相応しいものだ。名義上は登校時に張り切っていたような「ロケット研究部の部長さん」とはならなかったが、実際には十分その役割を果たせたと言えるだろう。ある意味それは、部として活動が始まるか否かよりずっと重要な「新しさ」だ。そして、こうした目に見えるのと異なる新しさは海果だけのものではない。

 

 

2.新しさとの距離

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彗「帰る場所が分からなくなってしまったんだ、何も買う前から」
瞬(迷子か……)
ユウ(シンパシーを感じる……!)

 

同好会の活動の一環としてモデルロケットのイベントへやってきた海果達は、合同開催されたグルメフェスの屋台で思わぬ人物と再会する。かつて瞬との勝負のためにペットボトルを集めようとしていた時に出会った、長い髪と眼鏡が印象的な一人の少女。その名を秋月彗(あきづきけい)といった。

 

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彗「ご紹介に預かりました、秋月彗です」
ユウ「わーお……」
遥乃「彗さん……!」

 

仲間に何か買おうと屋台を見に行って迷子になる、お土産を決めてもそもそも財布を忘れている……彗の行動は高校2年生とは思えないほど間が抜けている。宇宙レベルの迷子であるユウにシンパシーを感じられたり、自分のことだけでもいっぱいいっぱいの海果にフォローされる人間もそうはいまい。同じくモデルロケットの展示に興味を示した瞬からは「わたしはあんなにガキじゃねえ!」と言われるなど、海果達が彗に感じたのは年長者への敬意よりは身近さの方が大きかったのではないだろうか。だが、仲間と合流して去っていった彼女を次に目にした時海果達は驚きを隠せなかった。なんと彼女は、今回のイベントの目玉である大型モデルロケット打ち上げを担当する竜岡科学技術高校 宇宙研究開発部の部長――昨年度のモデルロケットの大会で優勝した実績の持ち主だったのだ。

 

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今日のロケットが多くの人の心に届いて欲しい。皆に挨拶した彗の願いを叶えるように、海果の瞳は天高く打ち上げられたモデルロケットに吸い込まれていく。優勝校の手掛けたモデルロケットが目を引かないわけはもちろんないが、もし以前彗に会っていなかったら、彼女の人となりを知っていなかったら海果はここまで惹きつけられはしなかっただろう。短い間とはいえ一緒に行動し、身近に感じた後だからこそ彗の正体に海果達は驚かずにいられなかった。そこにはつまり、全く無知の状態から知るより遥かに大きな「新しさ」があった。

 

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「新しい」ものというと、私達はつい全てが今までとかけ離れた何かをとばかり考えがちだ。けれど実際のところ新しさは既知や既存の何かとの組み合わせから、むしろ近くにあるものから生まれる場合の方がずっと多い。既に知っているもの、もともとあったものが見せる思わぬ変化にこそ「新しさ」は感じられるのであり、過去からのものとの繋がりなしではそもそも私達は何が起きているかの理解すら不可能だ。これは彗の場合に限った話ではなく、今回瞬がモデルロケットについて説明する際にペットボトルロケットと原理は変わらないという話から始める様子などもその一例として挙げることができるだろう。

 

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海果(今日からわたしは、ロケット研究部の部長さんです!)

 

この6話の始まり、海果は今日から自分は部長になるのだと「新しい」朝への思いにあふれていた。傍目には「いつもの」としか見えないユウとの「おでこぱしー」を介したやりとりにも、いつも以上の元気が満ちていた。相変わらずあがってしまいがちな彼女は以前とあまり変わっていないように見えてその実、今までよりずっと「新しい」海果へ、これまでから「遠い」自分に手を伸ばせている。

「新しさ」は人間には想像もできない遠くに、しかし思いもよらぬ近くにある。目に見えないもう一つの距離を掴めた時、私達は今までとは違う景色を目にすることができるのだ。

 

 

感想

というわけで星屑テレパスのアニメ6話レビューでした。彗の魅力爆発という感じで、海果のように皆が彼女に引き込まれていく回だったのではないかと思います。4話では何か今後も関係ありそうな人というイメージしか湧きませんでしたが、こうしてひとまずの全体像を見ると眼鏡を始めとした造形と「僕」の一人称、浮世離れしているくらいロケットに全力集中な思考など全てがパーフェクト。そりゃ瞬も妬くほど海果が心奪われるわけだ。日常生活は抜けていても確かに海果達より遥か高いところへ先んじていて、目標になるに相応しい人物だと感じました。

 

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海果が同好会について会長らしく振る舞う様子を見た時の笑原先生の顔も嬉しそうなこと。さてさて、彗という目標は海果達をどこまで引っ張り上げてくれるのでしょう。

 

 

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