魔法、魔術、そして意志――「魔法使いの嫁 SEASON2」23話レビュー&感想

©2022 ヤマザキコレ/マッグガーデン魔法使いの嫁製作委員会

集いの「魔法使いの嫁 SEASON2」。23話では敵とも味方とも言えない者達が禁書に立ち向かう。彼らの垣根を越える鍵は、いったいなんだろう?

 

 

魔法使いの嫁 SEASON2 第23話「Of two evils choose the less.」

mahoyome.jp

 

1.垣根の鍵

遂に己の思いを口にしたフィロメラを助けようとするチセの前に、多くの者が姿を現し集う。アダムがアルキュオネに忍ばせた呪詛、リズベスの呪縛から解き放たれた人狼、そして女神モリガン……神格をもって現出した禁書を、彼女達は止めることができるのだろうか?

 

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呪詛「僕は僕であってアダムじゃないのさ」

 

全てを決める「魔法使いの嫁 SEASON2」。23話は様々な者達がそれぞれの立場で決戦の舞台に上がるのが特徴だ。人造精霊アルキュオネに隠されていた、フィロメラの父アダムの形と記憶を複写された呪詛。主人公チセの級友ゾーイの邪眼によって思考の操作から解放された人狼。巫(かんなぎ)たるチセに名を供されあたりを戦場にした女神モリガン。8話でチセの師エリアスが見せた分身の再登場などもあり、リズベスを吸収して現出した禁書の神との決戦に相応しい豪華絢爛な状況が繰り広げられる回と言っていいだろう(それだけにリアンがこの場にいないのが残念)。ただ、一方でこの面々一人ひとりは限界を露呈してもいる。

 

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例えばアルキュオネに内蔵されていた呪詛はアダムの形や記憶をそのまま受け継いだ存在だが、娘を傷つけるものへの憎悪で駆動するプログラムに過ぎない彼は自分がアダムであるとはけして言わない。自分の家族が殺された経緯について聞きたいチセの級友ルーシーにリズベスの殺害を止められそのまっすぐさを褒めこそするものの、だからといってそれを聞くような柔軟性を彼は持たされていない。
また女神モリガンは20話で見せたように圧倒的な力の持ち主であるが、一方で彼女はもはや忘れられた神に過ぎない。禁書の神に対しても笑いながら踊るように戦う一方で決定打を放つほどの優位は持てず、モリガンはチセに「こやつの滅びそのものには私はなれぬぞ」と語ってもいる。

 

およそ人とは次元の違う強さを持とうとも、その強さはある種の「垣根」を越えさせてくれるわけではない。では、禁書の神への対抗に象徴される垣根を超える方法はどこにあるのだろう?

 

 

2.魔法、魔術、そして意志

強さではできない、垣根を越える方法。それは実は23話の序盤既に提示されている。というより、最初に垣根を越えたのはチセではない。誰あろう、この禁書を巡る騒動の張本人であるリズベス・サージェントだ。

 

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チセ「フィロメラと同じ……!」
エリアス「魔術書の影響だな」

 

リズベスは今回禁書の影響でその姿を変質させているが、本来こうした変化は起きないはずだった。前回チセが儀式のための陣を破壊し、禁書の神の現出は止められたと思われていたためだ。にもかかわらず現出が続くことに対して、エリアスはこう説明している。「陣はきっかけ。呼び水で重要じゃないんだ。魔法も魔術も最後の最後は生き物の意志なんだよ」……と。彼はつまり、生き物の意志は魔法と魔術の”垣根”を超えるところにあると語っているのだ。

 

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アルキュオネ「思い出したのです。私はあなたのために作られた……」

 

本作において魔術は、魔法の理屈を解明し人工的に再現するもの――ある種のまがい物、嘘や偽物として位置づけられている。そして魔術師の卵たちが通うカレッジ(学院)を舞台としたこのアニメ2期は、魔術の可能性と限界の両面を描いてきた。嘘やまがい物は私達の生活や文明を豊かにするものでもあるし、一方で政治的駆け引きも含めた魔術に長ける学院長のライザがフィロメラを切り捨てたようにそれによって犠牲になるものもある。だからチセが前回示した魔法は何よりも圧倒的に”本物”だった。けれどこれまでがそうであったように、本作は魔術というまがい物を否定する物語ではない。例として挙げられるのは今回退場する人造精霊、アルキュオネを巡る描写だろう。

 

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アルキュオネ「これでもう、私がいなくても大丈夫ですね」

 

アルキュオネは精霊ではあるが、自然から生まれた存在ではない。魔術師アダムが作った人造精霊たる彼女は出自自体が魔術的まがい物であり、フィロメラを守る役目すら与えられたものに過ぎない。けれど彼女はリズベスに頭をいじられ思考を制限されてもなおそれに抗い、最後には遂に役目を果たした。存在そのものが偽物の彼女の一生にしかし、役目という本物は確かにあったのだ。また彼女はリズベスに破壊され機能を停止する前に自分が見聞きしたアダム達3人の”記録”をフィロメラに託しているが、アルキュオネ視点であるが故に彼女の欠落したその記録はフィロメラにとって大きな”記憶”ともなった。フィロメラはリズベスによって封じられた記憶をまがい物によって補ったわけだが、それが否定されるべきものでないのは言うまでもない。まがい物や嘘、偽物は必ずしも否定されるべきものではない。つまりこの時もまた、垣根は越えられている。

 

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チセ「それでこうしてフィロメラが消費されるなら……止めます!」

 

フィロメラやサージェント家がお前達に何の関係があるのかとリズベスに問われた時、チセは答えた。フィロメラのように隠れて苦しんでいる子がたくさんいるのは知っているが、手を伸ばせる場所にいるのに見ないふりをするのは自分が嫌だと。あなたがやろうとしていることにはあなたには道理があるだろうが、自分にはそうではないのだと。
チセが語っているのは己がエゴで動いている自覚と、理屈による切り分けの限界である。言ってみれば彼女は、自分は”お気持ち”でフィロメラを助けるのだと表明したに等しい。けれど、全くの公平無私で誰からも筋の通った話など私達人間にできはしない。「どんなことでもどうとでも言えちゃうんだ」と21話でアイザックが語ったように、どれだけ本物を求めてもそこには逃れようなくまがい物が混ざり込んでくる。しかしそれは、見ようによっては本物やまがい物の限界を超える可能性の提示だ。すなわち”垣根を越える”可能性だ。

 

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エリアス「チセ。君は本当に僕に遠慮がなくなったね」
チセ「『立っているものは親でも使え』なんて言葉が日本にはあるんです」

 

チセ達は禁書の神格を送り返すため手を尽くすが、それはけして本物や良きものだけではない。使用者としての認証がまだ残っているフィロメラは禁書の力を利用してその神格を送り返そうとするし、そこでは他者の魔力を使用するというかつてフィロメラが犯した罪やチセの自己犠牲に似た状況も含まれている。けれどかつて被害にあったルーシーは勝手に吸われるのでなければ構わないと承諾するし、こうするのが一番いいと考えた末にチセが出した魔力使用の申し出はけして自己犠牲ではない。そこにあるのは万人に通じる理屈というよりごく個人的な選択、すなわちリズベスと禁書をリンクさせたのと同じ「生き物の意志」だ。

 

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呪詛も人狼も女神も、魔法も魔術も、本物もまがい物も全てが束ねられた先で禁書を再び手にしたフィロメラが、チセ達の魔力を受けてその神格を送り返さんとするところでこの23話は幕引きとなる。本作の主人公はチセでありそれを証明するような活躍を前回してみせたが、事態を収拾する決定打を放とうとしているのは彼女ではなくフィロメラだ。それはある意味、このアニメ2期においてチセの魔術的まがい物・・・・・・・とも言える彼女が本物とまがい物の垣根を越えようとする姿とも言えるだろう。ずっと自分を諦めていた彼女が思いを、意志を口にしたからこそこの状況は生まれることができた。

 

この世界は敵も味方もごちゃ混ぜにできている。その中で本当に垣根を越えるものがあるとすれば、最後の最後にそれを成す鍵は唯一つ。「生き物の意志」だけなのだ。

 

 

感想

というわけでアニメまほよめ2期2話レビューでした。「垣根を越えるのは生き物の意志」という結論は割とポンと出たのですが、そこにたどり着くまでに一歩足りない感があってですね。フィロメラがチセの「魔術的まがい物」であるという見立てが浮かんでようやくレビューを結ぶことができました。魔術とまがい物が重要なのは1話から示されていたので、ようやくそれが2期も含めた話として納得できたように思います。

さて、2クールに渡る魔法と魔術の物語も次回でいよいよ最終回。ルートは見事に整ったと思うので、最後にどこに着地することになるのでしょうね。

 

 

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