集う"これまで"――「ダークギャザリング」25話レビュー&感想

Ⓒ近藤憲一/集英社・ダークギャザリング製作委員会

続く「ダークギャザリング」。最終回25話では夜宵達の今後の計画が語られる。「これから」には「これまで」が必要だ。

 

 

ダークギャザリング 25話(最終回)「闇に集う」

darkgathering.jp

 

1.不思議な最終回

休校によって京都へ行く障害のなくなった夜宵達。夜宵は螢多朗と詠子に「神様」を倒す計画を語るとと共に、改めて覚悟を問い……

 

Ⓒ近藤憲一/集英社・ダークギャザリング製作委員会

夜宵「れっつごー!」
螢多朗・詠子「すとー!」

 

歴史の都へ誘う「ダークギャザリング」。この25話はアニメの最終回だが、物語は大団円を迎えたりはしない。現在もジャンプスクエアで原作漫画の続く本アニメは夜宵達が京都へ向かうところで終わっており、いわゆる「俺達の戦いはこれからだ!」状態なわけだが――この最終回の面白いところは今後、つまり「これから」を語っているにも関わらず「これまで」の話になっているところだ。

 

Ⓒ近藤憲一/集英社・ダークギャザリング製作委員会

螢多朗「そういえば以前神様を倒したって言ってたけど、その時はどうしたの?」
夜宵「基本は呪いで。弱体化に弱体化を重ねて、数の暴力でねじ伏せる」

 

夜宵達が京都へ向かう理由は友人である愛依の見舞い、そして彼女を見初めた神様の撃破にあり、作戦を練る中で自然話は「これまで」に触れずにはおられない。手持ちの卒業生、かつて別の神を倒した時のやり方、京都に敷かれていた結界にならいつつも守護ではなく弱体化の呪いのため用いる作戦、形代の逆利用……その後の螢多朗と詠子の霊障や卒業生ハウス再訪などもだが、そういえばこんなことがあった、こんなルールだったと再確認した視聴者は多いのではないだろうか? 「これから」のための「これまで」が語られるこの30分は、総集編同様に2クールで何があったかを振り返らせる効果を持っているのだ*1。チェックポイントとしてここを選んだことは、映像作品の作りとして極めて理に適っていると言えるだろう。ただ、理由はおそらくそれだけではない。

 

2.集う"これまで"

「これから」のために「これまで」を語るこの回が最終回となる理由。あるいは必然と言ってもいいだろうか。多分に推測になるが、おそらくそれは本作が幽霊を扱った作品であることと無縁ではない。

 

Ⓒ近藤憲一/集英社・ダークギャザリング製作委員会

H城址の霊「次は、お友達も連れておいで」

 

京都に向かう前、夜宵達はH城址へ向かった。卒業生相当の強さを持ち数少ない協力的な霊、「千魂華厳自刃童子」ことH城址の霊に以前助けてもらったお礼をするのと京都での戦いへの助力を乞うためだ。
城が攻め落とされた際に自刃した女性の一人であるH城址の霊は、人に危害を加える悪霊ではない。その目的はかつてここで何があったかを人々に忘れさせないこと――すなわち「これまで」を消させないことにある。そう、死後の存在たる霊を語るのは過去を語るのと同義であり、その点で本作はずっと「これまで」を語り続けてきた。そして「これまで」なしの「これから」などありえないのだから、愛依を花嫁とするにあたって記憶という「これまで」を奪う神様が現時点で最大の敵となるのは至極当然のことだろう*2。だからここで区切ることに意味がある。「これから」のために「これまで」が振り返られるこの時以外に、本作の映像化を一度締めくくるタイミングはありえない。

 

Ⓒ近藤憲一/集英社・ダークギャザリング製作委員会

夜宵「なり代わりどもへの対策は万全。そして、準備も完了した」

 

幽霊を題材とする「ダークギャザリング」は「これまで」を描き続けた作品であった。故に、過去の集積する京の地へ「これまで」が集うこの25話こそは本作最上のチェックポイントなのである。

 

感想

というわけでダークギャザリングのアニメ25話レビューでした。こうは書きましたが、花澤香菜さんの第2クールEDテーマ「インタリオ」が普段通りに最後に流れるのもあって中村義洋さんの次回予告を聴き逃しているような気がするのも正直なところだったり。

 

蠱毒」をテーマに読んでいった1クール目に比べると2クール目はまだまだ自分の中で消化できていませんが、なかなか他では見られない視聴時間を味わわせてもらったと思います。詠子を始め強烈な存在感を放つ者揃いでしたが、とにもかくにも寶月夜宵という一人に圧倒的な魅力がある。続きもやっぱり、映像で見たい……! スタッフの皆様、お疲れ様でした。

 

 

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*1:もう1体いるはずの卒業生や超越地蔵が戦力の頭数に入れられないのは、現時点までで「これまで」を語っていないからではないだろうか

*2:こう書くと「特攻隊の人達のおかげで今がある」と強いられた死が美化される一方、餓死した無数の兵や旧日本軍の蛮行といった「これまで」が軽視されもするのが本当に難しい