【ネタバレ】世界は姉妹でできている――「大室家 dear sisters」レビュー&感想

© なもり・一迅社/「大室家」製作委員会

ゆるゆり」のスピンオフを映像化した「大室家 dear sisters」。いわゆる日常系の本作に大筋はない。けれどだからこそ感じられるまとまりは、それこそが姉妹のようなものだ。

 

 

大室家 dear sisters

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1.世界は姉妹でできている

2011年の連載開始以来、タイトル通りのゆるさと女の子同士の関係が人気作となったなもりの「ゆるゆり」。本作「大室家 dear sisters」はそのスピンオフである「大室家」を2本立てで映像化した前編だが、これと言って大きな出来事が起きる作品ではない。高校生の長女撫子、中学生の次女櫻子、小学生の三女花子の三姉妹の日々の出来事を淡々と描いていく、いわゆる日常系――どこから見始めても、どこを切り取ってみても困ることはないだろう。ただ、三姉妹が揃う最初のエピソードは大きな意味を持っている。

 

撫子、櫻子、花子の3人が劇中最初に揃うエピソードはなんてことのない話だ。

櫻子が帰宅するとふとしたことで顔に「ヒゲ」のついてしまった花子は恥ずかしくて隠れており、その間に櫻子はガサゴソと何かを食べる音を立てる。撫子が帰宅すれば彼女の楽しみにしていたアイスがなくなっており、日頃の行いもあって櫻子に疑いの目がかけられるも犯人はなんと母と判明。櫻子は二人から謝罪されるも花子の楽しみにしていたヨーグルトは食べてしまっていて結局怒られ、罰として顔に「ヒゲ」を描かれてしまう……

この最初のエピソードには本当にとりとめがない。ただ一方で前に起きた出来事はほんの少しずつ続いていて、全くぶつ切れになっているわけでもない。これは淡々と日々の出来事が描かれながらも少しずつ関係が変化していく本作の作りと同じだし、なんなら大室家の「姉妹」の関係性自体がそういうものだ。

 

高校、中学校、小学校と分かれた三姉妹の日常は切り分けられていて、櫻子達が姉妹の全てを知ることは無い。撫子には普段は友人として接し、隠れて交際している恋人がいるようだがそれが誰なのかは明かされないし、櫻子は花子の友人の「みさきち」の話を聞いて犬のことと勘違いしたりする。けれど一方で全く接点が無いわけでもなく、友達という体で大室家を訪れる撫子の恋人を姉妹は見たり聞いたりするし、櫻子は犬とは別に花子にみさきちという友人がいると認識もする。姉妹の間には越えようのない距離が横たわっている一方で、壁で隔てられているわけではないのだ。それは撫子達が時に姉妹を憎らしく思ったりもするが同時に愛おしく感じたり、また彼女達の友人はどこかしらの要素で他の姉妹やその友人に似ている一方、もちろん全くキャラが被っているわけでもない点からも言えることだろう。

 

全く全てが繋がっているわけではないけれど、全く全てが切り離されているわけでもない。そういう世界を本作は描いているし、世界とは本来そういうものだろう。是々非々という言葉で都合よく切り分けようとする人もたくさんいるが、世の中そんな四角四面にできてはいない。全ては連続性の中にあり、私達は球形のそれの一面を都度都度見ているだけだ。だから喧嘩もすればハグし合ったりもするし、たまたまそんなところを櫻子の友人の向日葵に見られたりもする。それは大室家の愛すべき三姉妹が家族と、そして世界と繋がっている何よりの証明だと言える。

 

本作は大室家の三姉妹を描いたミニマムな物語だ。けれど一方で、この作品には世界の美しさがたっぷり詰まってもいる。世界は姉妹でできているのである。

 

感想

というわけで「大室家 dear sisters」レビューでした。まさか彼女達を映画館で見ることになるとは……予告を見た時は驚きました。そして実際に鑑賞してみると映画だからと肩肘張った話にはなっておらず、本当に大室家そのものだったことにも。

ゆるゆりでは櫻子が一番好きなこともあって、いつも通りだけどいつもと少し違う櫻子が見られたのは幸せなことでした。6月の後編も楽しみにしています。

 

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