忘れられる祝祭――「メタリックルージュ」5話レビュー&感想

© BONES出渕裕/Project Rouge

つかの間の「メタリックルージュ」。5話では謎の移動カーニバルの中でルジュが夢現定かならぬ時を過ごす。その時間は祝祭のように華やかだ。

 

 

メタリックルージュ 第5話「カーニバルは忘却と踊る」

metallicrouge.jp

 

1.続く幻影

以前バスで会った青年エデンの案内で、見失ったルジュを探し移動カーニバルの船に潜り込むナオミ。一方ルジュは「人形遣い師」なる男の用意した謎の装置の中で過去の夢を見ていたが……?

 

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進み直す「メタリックルージュ」。多くを語らない本作だが、5話はこれまで以上に見る者に委ねるところの大きい回だ。前回インモータルナインの一人「幻影のヴェルデ」を倒した後で気を失ってしまった主人公・ルジュは夢の中で過去を回想するが、登場する人間が入れ替わっているらしいノイズが走ったり彼女が眠る謎の装置を「人形遣い師」なる男が操作していたりとその真実性は今ひとつ疑わしい。いや、そもそも実際にルジュが見聞きした出来事だったとしても、彼女が兄と慕う真理部次長ジーン・ユングハルトの言葉が全て事実かどうかからして怪しいものなのだ。何一つ確かなものが掴めないその様は、例えるなら幻影――ヴェルデが前回完成させたそれの只中にいるのが今回のルジュと言っていいだろう。

 

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人形遣い師「お前が、お前自身が自ら答えを見つけるがいい。行け、お前の思うままに。そして探せ、見つけろ! お前はお前自身か、それとも哀れな人形か、その答えを」

 

星々を巡り興行する移動カーニバルの座長にして顔も体も全てを隠した謎の男・人形遣い師は目を覚ましたルジュに優しげに言う。哀れな人形達が自覚もできぬまま捕えられている呪縛を断ち切るのが自分であり、その糸を切ればルジュは自由になれる。他の誰でもない自分になれるのだと。だが移動カーニバルの船内にかつて地球人と敵対した宇宙人”簒奪者”のウォーマシンがあったことやヴェルデの重要パーツであるイドを回収していたことからも明らかなように、この男は人を助けるのを喜びとする聖人などではけしてない。人形遣い師はルジュの夢へ介入する際に彼女の中に隠されている「コード・イヴ」なるものを求めており、ルジュに自由になるよう促すのも自身の目的のために過ぎないことが伺える。

 

自由になることすら誰かの思惑の内。前回のヴェルデの「自由も幻に過ぎない」という言葉はこの5話、ますます真実味を増している。だが、それは絶望すべきことなのだろうか?

 

2.忘れられる祝祭

ルジュ、彼女を取り巻く様々な組織、人とネアンそして宇宙人。紐解けば紐解くほど見えてくるのは眼前の出来事の不確かさばかり。だがそれでも今回、ルジュは一つの自由を掴んでいる。

 

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ルジュの相棒であるナオミは彼女を救うべく移動カーニバルの船の潜入し、まだ意識の朦朧としているルジュと幸運にも遭遇。ヴェルデのイドも回収し後は逃げるだけだったが人形遣い師に仕える謎の女性オペラに追いつかれてしまう。銃弾すらかわす高い身体能力を持つオペラの前に絶体絶命の危機に陥ったナオミを助けたのはなんと、戦闘形態への変身<ディフォルム>すらしていないルジュであった。

 

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ルジュはナオミに言う。「助けたくなった、あんたを」と。その単純な思いは間違いなく彼女の内から発せられたものだ。真理部の任務だとか人とネアンだとかは関係の無い、本当にただそれだけの思い……相手がインモータルナインであればルジュとしては悩まざるをえないところだが、少なくとも現時点でのオペラはナオミの命を奪おうとする脅威であるからルジュは心のままに振る舞える。「自由」になれる。それは自由が幻に過ぎないことを否定はしないが、幻だとしてもこの時この瞬間が自由なのもまた確かだろう。なにせオペラ達が興行しているのはカーニバルなのだ。祝祭なのだ。幻のような、夢のようなひとときを彼女達が提供することに何の不思議があろうか。

 

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ナオミ「いや、でも私はやっぱり、もっとちゃんと助けてる感じで助けたいんだ」

 

謎の黒いグラディエーターの乱入もあって脱出に成功したルジュは、何があったのか改めてナオミに問われるがよく思い出せない。どれだけ楽しくともカーニバルは閉幕する幻のようなものであり、終わった後の世界に全てを持ち込むことはできない。けれど全てが一時に解決することなどそれこ幻だし、今はきっとこれでいいのだ。助ける・助けたについても、今回は助けられる連続で終わったと受け止めているナオミと助けてくれたから助けたくなったと言うルジュの見解は一致しないが、彼女達はそれを確定的な事実一つにまとめたりはしない。ルジュはナオミから渡されたチョコをはんぶんこにして返すが、それは二人が互いの見た幻を肯定した証でもあるのだろう。

 

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エデン「実は俺、ちょっと野蛮なんだよ。お嬢さん」

 

物語はこれで終わりではない。秘密も陰謀もまだあまりに多くが隠されており、黒いグラディエーターの正体にしてかつてバスで出会った青年・エデンが何を考えているのかも謎だ。それでも、この幻の自由がもたらした幸福感はルジュとナオミが歩き続ける道標になってくれることだろう。
幻の終わりを経て、二人の旅はまだまだ続く。忘れられる祝祭と共に、ルジュ達は絶望の幻影からひとまず逃れることができたのである。

 

 

感想

というわけでメタリックルージュの5話レビューでした。今回は本当に「雰囲気を文章にしました」という感じです。でも視聴する心地は悪くなかった。オペラ周りのまさに芝居じみたアクションも楽しかったです。

 

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エデンはOPで走ってるインモータルナインなんじゃないかと勝手に考えていたので、その腕が銃になる変形をかっこよく決めてる方だったとは意外でした。先に正体の明かされた彼は今後どんな立ち回りを見せてくれるんでしょうか。

 

 

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