結果は訪れ来たるもの――「メタリックルージュ」9話レビュー＆感想

二人再び「メタリックルージュ」。9話ではナオミの秘密が明かされる。結果は掴むものとは限らない。

メタリックルージュ第9話「訪れ来た者たち」

metallicrouge.jp

1.普遍の打ち消し合い
2.結果は訪れ来たるもの
感想

1.普遍の打ち消し合い

アッシュ「結果オーライすぎねえか？」
ナオミ「結果オーライ上等」

ルジュとアルターに加え、残るインモータルナインやシアンの乱入で戦場はますます混沌としていく。さらわれたジーンを追ってシアンと対峙するルジュに、ナオミはある策を授け……？

ルジュ「兄さんを返せ！」

決戦の地へ赴く「メタリックルージュ」。前回ジル達アルターを止めるべく戦いに赴いたルジュだが、この9話に至って状況はかなり複雑だ。去就を定めていなかった残りのインモータルナイン、漆黒のノアール（エデン）がルジュに味方する一方で双頭のアルコスは彼女を攻撃。ルジュの兄ジーンはアルターに協力する宇宙人・"簒奪者"の揚陸艦に連れ去られ、それを追おうとすれば妹を名乗るシアンが立ちふさがり……と各人の思惑が入り乱れている。だが、ジーンを連れ去られエデンも戦闘力を奪われるなど劣勢なのはルジュ側だ。今回の話では「結果オーライ」という言葉が印象的に使われているが、この時点でのルジュは逆に結果から程遠いところにいると言える。

結果から「遠い」……それは力で大きく劣っている時ばかりとは限らない。ルジュはジーンを追うのを阻むシアンと激突するが、スペックが同じ二人の戦いは勝敗が見えてこない。加えてルジュはシアンに手こずれば手こずるだけ兄を追いかける猶予を失うわけであり、互角もまた結果から遠い。そんなルジュを結果に導いたのはかつてのパートナー、ナオミであった。姉妹であるルジュとシアンの共通性に着目した彼女はルジュに出力の位相を反転させるよう指示し、逆位相のエネルギーはシアンと互いに打ち消し合って彼女を無力化するという手品めいた効果を発揮したのだが――これは必ずしもルジュだけにできる芸当ではなく、原理そのものはナオミが用意していたアンチフェイザーという兵器とも共通している。すなわちこの原理には、打ち消し合いにはある程度の普遍性があるということだ。

2.結果は訪れ来たるもの

シアンの無力化という結果を生んだ打ち消し合いには普遍性がある。これはもちろん、同じ原理で動く兵器が存在するなどといったレベルに留まる話ではない。すなわち、対になるものは打ち消し合いを起こし得るのだ。例えば相棒、パートナー……そう、ルジュとナオミのように。

ナオミ「ナオミ・オルトマンは人間ではないのです。来訪者が人類と接触するために作ったコンタクト・ネアン……それが私。言ってなかったっけ？」

ルジュとナオミは確かにかつてパートナーだったが、その重みは圧倒的にルジュの方が上だった。コード・イヴを始めネアンの未来に関わる重大な秘密を抱えているルジュと、守護局の高官が正体だったとはいえあくまで一人の組織人に過ぎないナオミでは軽重に比べ物にならない差がある……ように見えていたが、この9話でナオミは自らの驚くべき正体を明かす。なんと彼女は友好的な宇宙人・”来訪者”が地球人を模して最初に作った、地球人と接触するためのコンタクト・ネアン「ファースト」だったのだ。またナオミの案内でルジュは来訪者を初めて目の当たりにするが、人魚のような姿のその宇宙人の精神性は人間やネアンとはまた異なっており、ルジュはナオミが長年彼らと付き合ってこられたことに驚かずにはいられなかった。ルジュのような高い戦闘力こそ持っておらずとも、ナオミの存在は彼女と打ち消し合える（・・・・・・・）程度の重大性を持っていたと言えるだろう。アルターや簒奪者を止めるべくルジュは金星へ向かうが、ナオミはそんな彼女と並び立つために必要な情報をここで明かしてみせたのである。

ルジュ「一緒に行ってくれるんでしょ？」
ナオミ「……私がいなきゃあぶなっかしいもんね」
ルジュ「うっさい」

いったい、我々は一人で前に進むことは難しい。対になる何かがあるから、片方が従えるのではなく打ち消し合って新しい何かを生み出すから前進できる。ルジュとナオミもまた、対照的で打ち消し合うような二人だからこそ互いに影響を与えあってきた。今回シアンを止めたように、一人ではできないことを成し遂げてきた。それはおそらく、自由と調和であるとか人とネアンであるとかいった他の対にもメッセージたり得るものだ。ルジュとナオミがぶつかるのではなく打ち消し合えたなら、そこに自然とオーライな結果はついてくる。
結果を出すというと私たちは勝ち取ることを考えがちだが、結果は勝利からもたらされるばかりとは限らない。あるべき形をとれたなら、そこへ訪れ来たるものでもあるのだ。

感想

というわけでメタリックルージュの9話レビューでした。おおむね見立てはできていたものの、時間の都合と疲労で文章にするのがなかなか進まず。こうやって書いてみると、改めてアッシュとノイドの対が途切れてしまったのがつくづく残念……さてさて、一気に風呂敷が広がった感もありますがどう決着をつけるんでしょうね。次回も遅れてしまう見込みで申し訳ないのですが、楽しみです。