寄る辺なき答え――「メタリックルージュ」8話レビュー&感想

© BONES出渕裕/Project Rouge

選択の「メタリックルージュ」。8話では遂にコード・イヴの秘密が明かされる。だが、それがルジュの答えになるとは限らない。

 

 

メタリックルージュ 第8話「どこでもない家」

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1.事実≠指針

ロイ・ユングハルト博士はなぜ殺害されたのか? 秘密を探るべくユングハルト邸へ向かったルジュはそこでジーンと再会する。屋敷の地下にあったのはユングハルト博士の「記憶図書館」。そして……?

 

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ジーン「父さんの本心は分からない。お前をただ観察していただけなのかもしれないし、その裏側にお前に対する愛情が無かったとも言い切れない。父さんは……複雑な人だったからな」

 

自由なる「メタリックルージュ」。8話でルジュは己の秘密に迫るべく、ロイ・ユングハルト博士の記憶が保管された記憶の図書館とも呼ぶべき場所を訪れる。自分がしているのは正しいことなのか分からなくなったからこそ彼女はここへやってきたのだが――博士の記憶がそれに答えてくれるかと言えば否だ。

 

一人の人間の膨大な記憶を外部メモリーに収めたこの場所、そしてそこで兄と慕うジーンとの再会は確かにルジュに様々な事実を教えてくれた。ルジュが父と呼ぶユング博士が彼女に極めて研究的な目線を向けていたこと。移動カーニバルの夢で見た謎の女性はユング博士の助手にして彼と共にネアンを作り上げたバイオ物理科学者エヴァ・クリステラであったこと。コード・イヴとはアジモフ・コードを無効化し全てのネアンを解放できるプログラムでありそれはインモータルナインのイドに隠されていること。ジーンはエヴァの息子にしてユング博士に養子として迎えられたこと。ルジュもまたエヴァによって作られたこと。ユングハルト博士の殺害にもおそらくコード・イヴが絡んでいること……だが、最初に書いたようにそれらはあくまで事実に過ぎない。ユング博士の硬質な目線は彼がルジュに愛情を抱いていなかった証明にはならないし、コード・イヴは物理的にはネアンを自由にする一方で混沌を呼び彼らを更に混乱させる危険性を秘めている。端的に言えば、これらの事実は「ルジュはどうしたらいいのか?」という疑問には全く答えてくれていないのだ。

 

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シアン「わたしはシアン。あなたを殺す、あなたの妹……」

 

娘として扱っていたネアンへの目線、養子という経緯や秘匿されていた「母」の存在など、ユングハルトの家は表面に見えていたよりずっと揺らぎのあるものだった。ルジュの妹を名乗る謎のプロトネアン・シアンまでもが登場し、父・兄・自分というそれまでの家庭像は決定的に破壊されてしまう。今回の副題「どこでもない家」(英題ではNowhere House)が示すように、ルジュがこれまで寄る辺としていた家などは元よりどこにも存在していなかったのだった。

 

 

2,寄る辺なき答え

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アッシュ「あー……一言言わせてもらうとな。どっちも正しい、どっちも間違っちゃいない。自由も秩序もどっちも必要だ、困ったことにな」

 

家の喪失は、いわば指針の喪失である。倒せば全てが解決する悪の首魁などはなく、どうすべきか導いてくれる者もいない。自由と秩序の選択でジーンは秩序を選択したが、それが正しく間違っていなくとも最良とは言えないこともルジュはこれまで見てきた。だが、これは見方次第の話でもある。どの選択肢も最良でないなら、どれを選んでもそこには十分な道理がある。それはとても「自由」なことではないか? ルジュが選んだのは、少なくとも人類とネアンの闘争を是とするアルターには与しないこと……そのリーダー、閃光のシルヴィアことジルと戦うことだった。

 

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既に倒されたインモータルナインのイドを回収せんとジル、そして彼女と同じくインモータルナインであるグラウフォンが襲撃を仕掛けた真理部本部は大混乱に陥る。ネアンとは異なる戦闘機械人形の攻撃は人もネアンもお構いなしに命を奪い、対する人間側も守護局捜査官アッシュの相棒にして自分達に敵意を持たないネアンのロイド262を撃つなどカオスそのものと言っていい。ジーンはコード・イヴによって世界が混沌と化すのを懸念していたが、それはこんな有様がそこかしこに広がる未来を指しているのだろう。そして同時に、この混沌が自由を内包しているのもまた確かだ。

 

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エデン「君達とはどうも相性が悪そうなんで駄目なんだ、すまん」

 

アッシュはネアンであるロイドに事あるごとに憎まれ口を叩いてきたが彼が致命傷を負えば必死になって助けようとし、またロイドはそういう素直になれないところが欠点だと指摘しつつも一緒にいることで自分がネアンであることを忘れられたと――「自由」になれていたと打ち明ける。また2話でルジュ達と遭遇した謎の男エデン・ヴァロックの正体はプロトネアンの一人「漆黒のノアール」であったが、真理部に現れた彼は「相性が悪そう」というなんとも「自由」人な答えでジルへの協力を拒否しルジュに協力する。更にはアルターには所属しないがルジュの味方とも言えない「双頭のアルコス」ことアエス-アリス・マキアスが乱入し戦いの様子をシアンが眺めているなど、各人の状況は誰が最良とも言えない混沌と自由の真っ只中だ。先は見えず、しかし進まなければその先に待つものをしることはできない。そして、ノアールよろしく漆黒とでも呼ぶべきこの状況はジルの真理部襲撃によって始まったものではない。

 

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アッシュ「ところでそいつはなんだ?」
ジーン「さあ、僕にも分からない。だが求める答えがあるのかもしれない。……答えが見たいか?」

 

ユング博士の記憶の図書館に繋がる地下への階段が現れた時、ジーンを含めそこに何があるのかは誰も知らなかった。だが求める答えがそこにあるかもしれないからこそ、答えが見たいと欲するからこそルジュ達はそこへ降りていった。ある意味で彼女達は、記憶の図書館を出た今もこの暗い地下階段を歩き続けている。どこに繋がっているのか分からずともまっすぐ、まっすぐ。
何があるのか分からない、けれど答えが見えるかもしれない真っ暗な道。寄る辺なき答えを掴まんとするその時、私たちは初めてこの暗がりを歩いていくことができるのである。

 

感想

というわけでメタリックルージュの8話レビューでした。本作はアバンから何かを見つけるのがなかなか難しい印象があったのですが、今回はオーソドックスに始まりに全てが込められていたように思います。それにしても「漆黒のノアール」って滅茶苦茶ストレートなネーミングだな!

今のナオミがほとんど出る幕ないのも納得の状況ですが、果たして彼女はどうやって再び舞台に上がってくるのか。そのあたりも含めて次回が楽しみです。が、おそらく来週は事情で更新が遅れると思います。すみません……!

 

 

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