茶番と嘘――「愚かな天使は悪魔と踊る」8話レビュー&感想

©2023 アズマサワヨシ/KADOKAWA/かな天製作委員会

真実と嘘の「愚かな天使は悪魔と踊る」。8話は阿久津とリリーの噂が二人の関係を揺るがすこととなる。茶番と嘘は別物である。

 

 

愚かな天使は悪魔と踊る 第8話「Absolutely not」

kanaten-anime.com

1.オトしあいとは別のバトル

朝、一緒にマンションを出るところを目撃されクラスの注目の的となった阿久津とリリー。噂を打ち消すべく協力するが、二人を応援するつもりの夕香の行動が思わぬ事態を呼び……?

 

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リリー「あ、ごめん(棒)」
阿久津「おお、悪いな(棒)」

 

簡単には事が運ばない「愚かな天使は悪魔と踊る」。悪魔の阿久津と天使である天音リリーの「オトしあい」が特徴の一つである本作だが、この8話では彼らのアバターであるジョーとチャムは登場せず二人の駆け引きは見られない。ただ、だからといってジョーとチャムのボクシングに仮託されたバトルが見られないかと言えばそれは誤りだ。一緒にマンションを出るところを目撃された阿久津とリリーは交際の噂を打ち消すのに躍起になっており、そのために協力体制すらとっている。二人の対決ではなく阿久津&リリーvs友人達の「オトしあい」バトルが繰り広げられているのが今回の前半なのだ。そしてオトしあいバトルの系譜に位置するなら当然、いつものバカバカしさもこのバトルには継承されている。

 

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小屋松「それはつまりステディな関係ではないってことよ!」
夕香他「なんだってーーー!」

 

目的が相手を自分にオトすことから交際の噂の打ち消しに変わっても、本作のバトルのバカバカしさは変わらない。なにせリリーの説明は「阿久津が大きなマンションを発見して探究心から探索していたら遭難、敵と戦いながら出口を探していたが罠にかかってしまい朝まで石の中にいたところを住人の私がたまたま発見した」というものだから根底が破綻している。阿久津が制服をはたいて大理石の欠片を落とす仕草が説得力を持って受け止められる様を見ればもはやツッコミを入れるのもバカらしくなってくるほどだ。クラスメートの一人で眼鏡の似合う漫画大好き少女・小屋松さんが二人の距離について無駄に高度な考察を披露する様に象徴されるように、このバカバカしさは本作おなじみの「茶番」そのものと言えるだろう。ただこれまでの物語でも明らかなように、茶番はその全てを無価値にまではしない。続く後半見えてくるのは、茶番が明らかにする一つの真実である。

 

2.茶番と嘘

茶番はその全てを無価値にまではせず、かえって真実を浮き彫りにすることすらある。様相が大きく変わる後半、この真実はリリーの心を強く打ちのめすこととなる。

 

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リリー(なんじゃこれは、奴らを見ていると胸がチクチクする……監視のつもりじゃったが、今はもう見たくない)

 

校内で騒ぎが起きる前半と異なり、後半の舞台は学校外だ。なんと友人である棚橋夕香が阿久津を二人きりでの遊びに誘ったのである。事実上のデートだが、幼なじみの広田へのアタックを続けている彼女はもちろん本気で阿久津を狙ったわけではない。噂を確かめる中で彼とリリーの交際は嘘だが脈はあると感じた彼女は、リリーが素直になれるよう揺さぶりをかけるべくこんな「茶番」を仕掛けたに過ぎない。実際リリーは見事にこれに引っかかり、広田や同じくクラスメートの谷川を誘ってデートの様子を尾行。友人としてノリが合う故に楽しげな二人を見て胸がチクチクと痛むのを感じ、「そんな顔するんだったら、もう少し素直になってみたらどうかな」と谷川から指摘を受けたのもありそれが嫉妬なのを否定できなくなっていくのだが……その先には避けられないものが一つあった。

 

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阿久津「俺と天音はそんな風にはならないさ。説明とかは難しいけど、俺はやりたいこともあるし……うん、絶対ないかな」

 

谷川の帰宅や広田が場を離れたこともあって尾行を中断、物思いにふけっていたリリーは逆に阿久津と夕香に鉢合わせしそうになってしまう。二人が座ったベンチの後ろに隠れてその話に聞き耳を立てていた彼女は、リリーをどう思っているか夕香に尋ねられた阿久津に良いところを列挙され頬を緩めていたのだが――続く言葉にショックを受けずにはいられなかった。付き合いたいと思ったりしないのかと問われた阿久津は、自分とリリーは絶対にそんなことにはならないと返したのだ。

 

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阿久津は嘘は言っていないが、全てを正直に語ってもいない。リリーを褒めた際も「目的をちゃんと持っててそれを叶えるために頑張ってる」の後には「手段を選ばないともいう」、「優しい」の後には「天使にしては」などと心の中で但し書きを入れており、付き合うことは絶対ないと返したのも自分と天音が本来敵同士であることなどを勘案したためだ。そもそもで言えば希望を問われたのに可能性についての話で返すのは回答としてズレていて、彼の言葉は間違ってはいないが適切とも言い難い。だがリリーにとってみれば阿久津の言葉は自分が勝手に舞い上がっていただけだと突きつけられるに等しいし、今のままで二人が付き合う可能性は確かに無いのだ。茶番じみてはいても天使と悪魔は敵対関係にあり、二人は互いが相手を自分の虜にする「オトしあい」バトルをしているつもりでいる。その嘘に向き合わなければ、彼らの恋が成就することは絶対にない。二人が一夜を共にしたというのが誤解であるように、どれほど惹かれあっていても茶番ですらない本物の「嘘」で終わってしまうことだろう。

 

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リリー(当然じゃ、我らは敵同士なのだから)

 

茶番は確かにバカバカしいし真実味に乏しいが、かといって全てが嘘なわけでも何の変化ももたらさないわけでもない。今回の茶番デートが引き出したのは、阿久津とリリーの恋路は今のままでは行き止まりにぶつかるという「真実」だ。嘘ならざる茶番をもってそれに対抗できる真実を見つけない限り、二人はこれ以上先へは進めないのである。

 

感想

以上、かな天 アニメ8話のレビューでした。夕香が本当にいい仕事をしている。彼女と広田の今後も気になるところですが、まあさすがに1クールの範囲には入らないですよね。素体の登校や再登場を焦らしままの謎の人物など事態はいろいろこんがらがってきそうですが、果たして。

 

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夕香「どう? 似合う?」

似合う!

 

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似合う!!

 

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似合う!!!

 

 

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