天使様は茶番に夢中――「愚かな天使は悪魔と踊る」6話レビュー&感想

©2023 アズマサワヨシ/KADOKAWA/かな天製作委員会

新展開の「愚かな天使は悪魔と踊る」。6話では思わぬシリアスな兆しが覗く。リリーにとって阿久津との時間は何なのだろう?

 

 

愚かな天使は悪魔と踊る 第6話「Close your eyes」

kanaten-anime.com

 

1.天使様は茶番に夢中

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キスしそうになった昨日の一件の後眠ることができず、翌日授業中に居眠りを始めてしまったリリー。夢の中では何故か阿久津との恋愛ゲームが始まり、おまけにそれはバグまみれで……!?

 

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リリー「めっちゃキモい!」

 

バカがラブでコメる「愚かな天使は悪魔と踊る」。阿久津とリリーが前回あわやキスしそうになり、二人の距離も急接近……と思いきやそうは事が運ばないのが本作。事件のため寝不足のリリーは授業中に居眠り、夢の中で阿久津との恋愛AVG的なゲームをプレイすることになるが、肝心のゲームがバグまみれ。阿久津の髪のテクスチャが消えたりテキストが文字化けする状況はいつもの「茶番」そのままに見える。ただ、これはあくまで夢であって現実ではない。バカバカしさはいつも通りでも、夢である以上そこには一種のメタ的な要素が伴われている*1

 

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阿久津(お、起こした方がいいのか……?)
リリー「びっくりさせおって、この……」
阿久津「いや……なんか幸せそうだからいいか」

 

現実で阿久津が見る、居眠り中のリリーは表情豊かだ。当初こそ多発するバグに白目を剥くような寝顔になっていた彼女はしかし、ゲームの進行と共にそれに順応していく。デートイベントでは阿久津のバグった登場に吹き出しつつも嬉しそうな寝顔に変わり、ウエスト侍に彼が斬殺される謎イベントについては夢と分かっていたはずなのに号泣。阿久津に起こされればその生存に安堵して涙を流すほどにリリーは夢に夢中になっていた。

 

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リリー「分からなくも……ないぞ」

 

リリーが夢中になっていたのは夢であり茶番……つまり阿久津とのオトしあいバトルを始めとした学校での時間である。バカバカしいやりとりばかりしていた彼女だが、実のところそれが楽しくてたまらなくなっていたのだ。だから保健室で夢から覚めたリリーはここでの日々は眩しすぎると呟き、元の世界ではあまり上手く行っていなかったがここでの生活は充実しているという阿久津の言葉にも同意するのだろう。だが、この賛同は現在の幸福だけを意味しない。リリーも「元の世界であまり上手くいっていなかった」のでなければ、阿久津の気持ちが分かるはずはないのだから。

 

2.茶番は現世の夢

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リリー「すまぬ。対悪魔用の兵器、我の素体じゃ」

 

スーパー銭湯やプールに行くため、首輪をタトゥーと誤解されないよう目立たなくしてほしい。阿久津のバカバカしい、すなわち茶番じみた願いを笑って聞き入れたリリーは首輪の構成を変化させようとするが、それは思わぬ事態を引き起こす。なんと裏切り防止用に首輪に仕込んでいた素体(魔法人形)が自分達に襲いかかってきたのだ。

 

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素体がなぜ暴走したのか、なぜ本来よりも強大な力を発揮しているのか? その背に何らか見覚えのある刻印を目にしたリリーは動揺し、危うく素体に殺されかかってしまう。おそらく素体に手を加えたのは、彼女が「元の世界であまり上手くいっていなかった」経緯に大きく関わる者なのだろう。だが、ここはかつていた天界ではない。そして今のリリーは一人ではない。阿久津が叱咤してくれるなら、この程度の恐怖は茶番・・でしかない。

 

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阿久津「本当に引っかかるとはな、甘いんだよ!」

 

二人は土煙に乗じて素体を背後から急襲……と見せかけてリリーの鎖による偽物を囮に本物の阿久津が抑え込む連携プレーで素体を制圧する。強大なパワーと反応速度という正統派の強さで立ちふさがった素体が背負っていたのが「本物」なら、土煙に偽物と二重に嘘を重ねたリリーと阿久津の作戦は「茶番」だ。今回の戦いは上手くいかない元の生活=「本物」とバカバカしいラブコメの「茶番」の対決の前哨戦だったと言えるだろう。だが、これはまだ始まりに過ぎない。
素体を操っていた謎の女性は弟を偵察に差し向けているし、リリーはおそらく天界での嫌な思い出にこれから向き合わねばならない。それは、呆れているようで愛しんでいる茶番の日々から一時的にでも離脱せねばならないことを意味する。

 

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天音「どこにも、行くな……」

 

夢は普通、現世では見られない。だが天界が本来の住居であるリリーにとっては、この「現世」こそが夢を見せてくれる場所たり得る。阿久津とのラブコメとは、バカバカしい茶番とはリリーが現世で見る夢に他ならないのだ。

 

 

感想

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以上、かな天アニメ6話レビューでした。阿久津が自分を誘惑しにかかっていると勘違いしたリリーの「ネクタイ外してたじゃん。ボタンも外してたじゃん」の言い回しの素っぽさよ。この子まだまだ外に出せてない本性あるな。そういう、天使らしくないのにむしろ本物の天使のようにかわいい部分はこれからますます見られそうです。今回出てきた姉弟との関係は非常にシリアスに見えますが、これもその内茶番になるのかしらん。そこらも楽しみです。

 

 

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*1:先述した恋愛AVG的なインターフェイスや、これは夢だとリリーが認識しているのが示唆的