部室棟はワンダーランド――「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」2話レビュー&感想

スクールアイドル同好会の廃部に、1年生の中須かすみは1人真っ向から反旗を翻すも空回り。偶然出会った侑と歩夢を巻き込んで同好会を再開しようとするも、かすみは自分の行動がかつて反発したせつ菜と同じものだと気付いてしまい……「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」2話は、アニメーションPV付きシングル「無敵級*ビリーバー」でアピールの先陣を切った中須かすみを主役に描かれる。
 
かすみが最初に起こしたアクションは部室のネームプレートの奪還だったが、そんなことをしても廃部の決定が覆るわけはない。彼女が取り戻したかったのはネームプレートの収まる部室、つまり居場所そのものだ。にも関わらずかつての部室がワンダーフォーゲル部に変わっているのは、かすみが目指した「ワンダーランド」の消失なのである。
 
 
 
 

1.かすみとせつ菜は似た者同士

部室がなければ他に同等の場所を求めざるを得ず、かすみはさまよう。しかし同じく同好会所属だった桜坂しずくは兼部している演劇部にも居場所があるし、他の面々とは連絡も取れない。ならば自分で居場所を作ってしまおうというのが彼女のタフなところだが、そのタフさは一方で頑なさに繋がりかねない危険を秘めている。そう、かつて彼女が反発したせつ菜のような頑なさに。
 
せつ菜が自分に「かっこいい」を押し付けたのと自分が歩夢に「かわいい」を押し付けたのが同じことだとかすみが知るのは、せつ菜と自分が実は似た者同士だと知ることなのだ。ならばこのまま進んだ先に待つのもやはり衝突で、だからかすみは悩んでしまう。
 
 

2.似た者同士の別人が一緒にいるには

それぞれに求める「かっこいい」や「かわいい」があって、自分のそれで相手を染めるようなことはできない。してはいけない。自分の求める「かわいい」で他者を傷つけてしまうのではないか。かすみは(おそらくせつ菜同様に)悩んでしまうわけだが、ここで光るのが侑の立場だ。
侑はスクールアイドルが好きだけど自分がなりたいわけではなく、また優木せつ菜をきっかけにその世界に興味を持ったものの彼女の信奉者というわけでもない。彼女にとってはせつ菜のかっこよさも歩夢とかすみの異なるかわいさも等しくときめきの対象で、それぞれ自分の中に居場所がある。かすみが求めていたのは部室だったけれど、侑の中には部室棟があるのだ。そう、虹ヶ咲学園のモデルであるビッグサイトは侑の、好きを追いかける人を応援する者の心の中にある。
そういう形で色々なかわいいやかっこいいが一緒にいられると知ったからこそ、かすみは堂々と自分の「世界で一番のかわいさ」を歌い上げられる。異世界の扉を――ときめきを侑に見せることができる。
かすみが求めたワンダーランドとして求めた部室は消えてしまったが、それはワンダーランドの消失を意味しない。侑の心は彼女にとって、いやきっと同好会の皆にとってのワンダーランドとなるだろう。
 
 
そして、同好会の一員だったエマの友人である果林は「優木せつ菜」という生徒が虹ヶ咲学園の名簿には存在しないこと、その正体が生徒会長の中川菜々であることを突き止める。優木せつ菜とは現実に「居場所」を持たない、おそらく中川菜々にとって「かっこよさ」を具現化した存在だったのだ。だからスクールアイドル同好会という「居場所」をなくせば優木せつ菜もまた消えると思っている。
しかし彼女は知るだろう。「優木せつ菜」がもっと多くの場所に存在し、既にワンダーランドの住人となっていることを。孤独に歌う以外の形でも「かっこよさ」を具現化し続けられることを。その時、優木せつ菜もまた居場所を取り戻すことができるのだ。
 
 

3.感想

というわけで虹ヶ咲の2話レビューでした。さあときめけ、中須かすみの降臨であるぞ!……とでも言わんばかりの回。実際、縦横無尽に変化する彼女の表情も所作も魅力的で、それが最後の「異世界」に収納されるのはアイドルとしてあまりに正解。系譜としては妹キャラに属するタイプなのだろうけど、そういうあれこれ以前にかわいい以外の何だと言うのだ。
彼女へのときめきを爆発させつつ、侑の役割の広がりも見られる素敵な回だったと思います。次回も楽しみ。
 
はいかわいい。