素顔の仮面――「ゾンビランドサガ リベンジ」11話レビュー&感想

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©ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会
危機にこそ真価の問われる「ゾンビランドサガ リベンジ」11話。さくら達は素顔を隠すため尾崎人形を利用した仮面を作る。だが、それだけが彼女達の仮面だろうか?
 
 

ゾンビランドサガ リベンジ 第11話「たとえば君がいるだけで SAGA」

息が切れるほど走ったのは、いつぶりだろうか。
あの時もゾンビィのようにボロボロなナリだった。
向こうがどこまでも潰しにくるというなら、どこまでも抗ってやる。
サガの明日はネバーエンディング。
フランシュシュがその明日を見せてやる。
ここからが反撃の時だ。
―――――《巽幸太郎》の日記より

公式サイトあらすじより)

 
 

1.いくつもの仮面を剥いで

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この11話は、簡単に言えばさくら達から仮面を剥いでいくお話だ。先述の尾崎人形のお面やメイクに限らず、倒壊した屋敷は彼女達の素顔を隠す仮面であったし、不在の幸太郎は大古場からすれば彼女達の意思を隠す仮面に等しい。ショッピングセンター・カチオンへ避難したさくら達は行き場がないようでその実、仮面という鎖のない全く自由な状況にある。虚像の仮面を被るアイドルをしなければならない理由などどこにもない――だが、さくら達は子供達の前で歌い踊ることを選んだ。
 

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©ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会
サキ「今日もちょっとだけ歌うんで、聞いてってな!」
 
照明はカーライト、加えてマイクも録音再生機材もない状況で開くライブとは、例えるなら極めて「素顔」のライブだ。体が覚えたリズムだけが頼りの歌とダンスは一切の手助けを、仮面による底上げを許さない。にも関わらずさくら達が子供達を魅了したのは、彼女達の「素顔」が「仮面(アイドル)」たり得ている証明であろう。
仮面をいくつも剥いで現れた素顔こそがむしろ仮面。この図式は、さくら達のピンチに残酷な優しさとなって顕現する。
 
 

2.否定される素顔と、選び取るアイドルの仮面

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社会的動物である以上、人は秘密や思いを隠す仮面なしでは生きていけない。ゾンビィであるさくら達にとってそれはいっそう切実な問題で、だから漂流中にはまずメイクをしたし尾崎人形の素材でお面(仮面)を作ったりもした。
だが劇中で描かれるように、メイクとお面の仮面は共に割れてしまった。アイドルという仮面を見せる場所で、さくら達は思い切り素顔をさらけ出してしまった。アイドル失格とゾンビィバレが重なる最悪の事態、のはずだった。
 

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子供「違うよ、ゾンビって怖かとよ?」
 
しかし子供達は、さくら達のゾンビィ告白を否定する。仮面の下の素顔は素顔としてではなく、それすらも仮面として認識されている。根っからのアイドルとしての素顔を見せたさくら達は同時に、仮面の下の素顔すら仮面になっていた。
 
子供達の反応が好意に根ざしているのは間違いない。さくら達を社会から追い出さないのも間違いない。けれど素顔の存在すら認められないのは、見ようによっては恐怖した警官の銃撃よりもずっと強烈な否定を意味する。撃たれなくとも恐れられなくとも、素顔のさくら達が生きていく場所などどこにもなかった。
 

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愛は泣きそうな素顔を子供達には見せない。見せるのは笑顔の仮面だけだ。素顔を見せてしまったら、全てが仮面で成立するこのステージは終わってしまう。終わってしまえば"永遠のアイドル"にはなれない。
 

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子供「お姉ちゃん達怖くないけん、ゾンビやなくてね」
子供「そうそう、そうばい。うーん……」
子供「「フランシュシュ!」」

 

さくら達の仮面の名はフランシュシュ。ゾンビィでもフランケンシュタインでもない、唯一無二の存在。
それは今は、子供達の戯言の中の存在でしかない。だがもっともっと多くの人の心に刻まれたならその時、フランシュシュは絶対の存在となる。永遠のアイドルとなる。幸太郎にできるのは自らもまた仮面を被り、さくら達の仮面を美しく整えることだ。
運命の日まで後16日。天命を待つべく、ゾンビィは果たされる。
 
 

感想

というわけでゾンサガ2期11話レビューでした。昼に感想用のメモを投稿したのですが、お面、仮面の扱いがその後で浮かんだので半分くらい実際のレビュー文面では使わなかったな。この辺の偶像性は1期8話のリリィ回や今回ラストの幸太郎とさくらの絡みなどと合わせて語れるはずですが、もう一段ひねりが必要なので僕にはまだちょっと手に負えないかしらん。キャプチャーした愛の表情が辛い……辛い……ッ!
次回最終回は異例のCM無し27分間ノンストップ。伝説を見届けたいと思います。
 
 

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