ひっこみとひっこみ――「白い砂のアクアトープ」2話レビュー&感想

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©projectティンガーラ
2人の物語が幕を開ける「白い砂のアクアトープ」2話、水族館で働き始めた風花は大失敗をしでかしてしまう。しかし、それを取り戻すのは成長によってではない。
 
 

白い砂のアクアトープ 第2話「濡れるのも仕事のうち」

「がまがま水族館」で働くことになった風花は、くくるのおじいとおばあに迎えられ、海咲野家に身を寄せることに。閉館が迫る水族館を立て直すため、夏休みが最後の勝負とより一層仕事へのやる気を見せるくくる。翌日、風花はくくるから水族館の仕事の厳しさを教わりながらも、2人でペンギンのエサやりショーを行うが…!?
 
 

1.完璧であろうとすることは不完全の証明

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がまがま水族館で働くことになった風花の初仕事はペンギンの餌やりショーであったが、ペンギンのクチバシの鋭さにうろたえ餌をぶちまけ水中に落ちるといきなり大失敗してしまう。初めてだから当然だが、水族館で働くには今の彼女は欠落だらけだ。
 

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くくる「マニキュア!?肌には何も付けないで、香水とか化粧もNG。全部生き物のためだから!」
 
初心者の風花の働きぶりが欠落だらけなら、対照的にくくるの仕事ぶりは完璧である。いや、完璧であろうとしている・・・・・・・・・・・。解凍時に流れ出る真あじの栄養はビタミン剤で補おうとし、老朽化した設備を更新しようとし、生き物のためにマニュキュアや化粧もしないその姿勢は常に完璧へと向けられている。
 
だが、完璧であろうとすることは逆に言えば不完全で欠落を抱えている証明だ。館長を名乗ってはいたがそれは夏休みの間に過ぎないし、風花への指導もけして十分とは言えない。何より、風花に対する厳しい言動は、閉館の危機にくくるが追い込まれてしまっているからだった。
 
 

2.成長によって前進するのではなく

人は誰もが不完全で、できないことを山ほど抱えている。言ってみれば凸凹のパズルのピースのようなもので、整った四角や丸のような形の人間はいない。また人のひっこみに都合良く合うでっぱり=うまい話を持ち出してくる人間は、かえって信用がならない。
 

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風花「帰ってください!このボードの価値が分からない人には、これ以上ここにいてほしくないです!」
 
 
人のひっこみは、欠落は、むしろ違う誰かのひっこみによってこそ埋められる。追い込まれているくくるの心に虹を差したのは必要な金を融資するという詐欺師ではなかった。彼らが水族館のボードを軽んじたことに激怒し追い返し、水までかけた風花の「やらかし」=欠落=ひっこみの方だった。館長として一応の注意はしつつ(つまりそれが欠落であるとは言いつつ)、くくるにとって風花の行動はとても嬉しいものだった。
 
 

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ひっこみはひっこみによって埋められる。ただしひっこみ同士を組み合わせるには、隠すことなくひっこみを露出させねばならない。それは自分の欠落を認めることに他ならないから皆ためらうのだが、つるつるの四角や丸を装っていては取り付く(組み合わせる)島もない。
くくるががまがま水族館の苦境を、風花がアイドルとしての夢潰えた過去を語ることで二人がそれぞれ抱えたひっこみは明白になっていく。欠落を認めることで、組み合う余地は見出されていく。舞台はくくるの水族館であるが、彼女の欠落を埋めることで風花の欠落もまた埋まるのは言うまでもない。
 

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くくると風花は成長によって前進するのではなく、欠落で互いを埋めあった結果として成長を手にするのである。
 
 

感想

というわけで白い砂のアクアトープの2話レビューでした。見立てとしては1話=作品全体のテーマの仮説とそれほど変わらないので、あまりそこに囚われ過ぎないようにしないと。アイドルの夢を諦めた件については風花も事務所側もすれ違ってる印象を受けますが、実際そうなのかそもそも今後取り扱われることがあるのかしらん。
スタートラインに立ったこの先、物語はどんな風に展開していくのでしょうね。
 
 

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