優勝候補の所以――「ラブライブ!スーパースター!!」2期3話レビュー&感想

©2022 プロジェクトラブライブ!スーパースター!!
輝きの理由を知る「ラブライブ!スーパースター!!」。2期3話では新たなライバルの登場と、それでも優勝を目指すかのん達のリスタートが描かれる。Liella!はなぜ優勝候補たり得るのだろう?
 
 

ラブライブ!スーパースター!! 2期 第3話「優勝候補」

昨年も出場したスクールアイドルフェスへ招待されたLiella!。出番はトリだ。
初の大舞台に緊張するきな子。
そんなとき、ステージから圧倒的な歌声が響きわたる。ウィーン・マルガレーテだ。
結局Liella!は特別賞を受賞したものの、優勝を逃してしまう。優勝したのはウィーンだった。
ウィーンはかのんに、「そこまで大した大会じゃないみたいね……ラブライブ!って」と言い残し、その場を後にする。

公式サイトあらすじより)

 

1.見えない根拠

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すみれ「それってつまり……トリ! ズバリわたし達、主役ったら主役よ!」
可可「うるさいです」

 

今回はかつてかのんが歌ったスクールアイドルフェスが再び開かれる回だが、状況はかつてと同じではない。1年前そこで歌ったのはかのんと可可の「クーカー」だったが、今の彼女達は結ヶ丘女子高等学校を代表するLiella!であり人数も6人に増えている。前回優勝したスクールアイドル・サニーパッションが出場しないこともあってトリに選ばれたLiella!はラブライブ!同様の優勝候補と目されているわけだが――この2期3話から見えてくるのは、期待に対するかのんの自信のなさだ。
 

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かのん「本当にいいの? わたし達で」
 

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かのん「どうしてわたし達のことを、一番心躍るグループだとインタビューで答えてくれたのかなって」
 
フェスでの扱いに、サニーパッションからの高評価に。今回はかのんは度々疑問をぶつけている。どこで優勝したわけでもないLiella!は客観的な成果を持たないグループであり、そんな自分達が注目されている現状を一番信じられないのはかのん自身なのである。
 

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謎の少女「優勝候補なんでしょ? 歌ってみてよ」
かのん「え……」
謎の少女「できないの?」

 

突然現れた謎の少女に歌うよう求められたかのんはしかし、咄嗟に応えられず歌えない。少女がかのんに求めたのは単に歌を「歌う」のではなく、自分の実力と自信を「謳う」ことだ。己が優勝候補であることを明確に主張するよう求められたわけだが、かのんは自分で自分を信じられていない以上そんなことはできない。そして彼女の己に対する不信は、謎の少女との再会とその正体によっていっそう強固なものになってしまう。
 

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いよいよ迎えたフェスの日、再び姿を現した少女の名はウィーン・マルガレーテ。高校生どころか中学3年生、それも一人で出場した彼女の実力は圧倒的で、優勝候補だったはずのLiella!は呆気なく蹴散らされてしまう。かのん達が掴んだのは2度目の特別賞、と言えば聞こえはいいが、またも結果を残せない苦い終わりであった。
 

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ウィーン「じゃあ、ここに来たのは無駄足だったってわけね」
 
年下に完敗した事実に打ちのめされたかのんの前にウィーンは再び現れ、もう一度彼女を挑発する。Liella!程度が優勝候補ならラブライブ!も大したことはない……Liella!とラブライブ!両方に対するこの侮辱に対しかのんができたのはしかし、自分達は優勝候補なんかではないという惨めな反論だけだった。もちろん、この言葉ではラブライブ!は擁護できてもLiella!自体には何のフォローもできていない。かのんはこの時、自分達が優勝候補たり得るという自信を完全に失ってしまったのだ。
 
 

2.優勝候補の所以

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ウィーンに自信を打ち砕かれた翌日、かのんは皆に提案しようとする。またしても結果を残せなかった自分達にとって、ラブライブ!優勝はふさわしい目標なのか。身の丈に合っていないのではないか。……しかしその言葉は、部室に大挙して訪れた学校の仲間達によって皆まで言う前に遮られる。
 

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ナナミ「かのんちゃん達は、自分達のことまだまだって思ってるかもしれないけど……」
ココノ「この学校の生徒にとっては誇りなんだよ、自慢なんだよ」
ヤエ「Liella!はこの学校の『スーパースター』なんだよ!」

 

かのんの級友を始めとした仲間達は、この学校で各部活がまるで実績を残せていない現状をかのん達に見せる。当然だろう、創立からまだ1年しか経っていないのだから、何かで入賞することすら本来は難しいのだ。
結ヶ丘という学校はまだほとんど何も客観的な成果を挙げられておらず、故に昨年東京大会で2位となったLiella!は級友たちにとって自慢であり、誇りであった。かのんは、Liella!は結果を出せない自分達に悩んでいたがそれは結ヶ丘全体がそうで、だからLiella!の活躍は学校の皆に希望を抱かせていたのだ。
 

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すみれ「みんなで作り上げるものでしょ、スクールアイドルって」
 
Liella!の一員であるすみれはスクールアイドルは皆で作り上げるものだとこの3話で言っているが、この"皆"はLiella!のメンバーだけで完結するものではない。スクールアイドルを作り上げるのは、級友や1年生といった仲間達を含めた"皆"だ。未だ結果を出せない結ヶ丘とLiella!が作り上げた、彼女達だけのスクールアイドル――それこそが本作のタイトルであり、今回劇中でも言及される「スーパースター」なのだろう。
 

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人間一人が持てる才能には限りがあり、またそれはより優れた存在の前ではいとも容易く崩されてしまう。今回登場したウィーンの存在は、その現実をかのんに否応なしに突きつけた。けれどLiella!は絶対的な何かに拠ってではなく、客観的な実力や実績に拠ってでもなく、しかし最高と思える仲間達の集いそのものをセンターとして作り上げられている。かのんは自分に自信は持てなくとも、"皆"に自信は持てるのだ。学校の皆への感謝の気持ちを込めたライブが会場中央の円形ステージで行われるのは象徴的で、それは誰かや何かを英雄や神様に祭り上げるよりはずっと健全な集団の形ではあるまいか。それを示せることにもまた、一つの意義はあるのではないか。
 

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かのん達一人ひとりは小さな星に過ぎない。しかしそれを結んでスーパースターになれるからこそ、Liella!は優勝候補たり得るのだ。
 
 

感想

というわけでスパスタ2期3話レビューでした。正直なところ最初のうちは級友の言葉がなぜかのん達の励ましになるのかさっぱり分からなかったのですが、前半のかのんの言動が全部自信の無さで繋げられるんだなと気付いてからレビューの筋立てが決まっていきました。先輩になってもかのんはやっぱりかのんだなというのが感じられる回だったと思います。さて、次回は遠巻きながらも近づいている二人の加入回になるのでしょうか。最後の一人が加入する経緯が見えてこないのも含め、楽しみに見ていきたいです。
 

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ここすみれの横顔が大変かわいらしい。
 
 

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