魔法の対価――「幻日のヨハネ」2話レビュー&感想

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不思議の源「幻日のヨハネ」。ヨハネは2話でも杖を振るうがそれは魔法を起こさない。魔法に必要な対価は、一体なんだろう?
 
 

 

幻日のヨハネ -SUNSHINE in the MIRROR- 第2話「わたしのおしごと」
 

1.魔法を使えない魔法使い、魔法が使えないのに魔法使いのように働く人々

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ヨハネ「何も起きない……あの魔法はなんだったのよ?」
 
前回幼馴染のハナマルと再会し、彼女の前で歌い魔法のような出来事を起こしたヨハネ。その時に現れた不思議な杖を彼女は魔法の証と考えるが、今回それを振るっても出るのは空振りの音だけだ。前回のような奇跡を起こすには何か条件が、対価が足りない。
 

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ヨハネ「このまま誰も来なかったら、わたしの未来はどうなっちゃうのよ!?」
 
対価と言えば、多くの人が最初に考えるのは金銭であろう。ヨハネにしても魔法が使えないのは何もない街にいるから駄目なんだと考え、出ていくために必要に迫られたのはお金を稼ぐこと。彼女は魔法が使える自分ならできるはずと占い屋を始めるがそう上手く運ぶわけもなく、早起きしてもまともに客が訪れる気配は見えない……嘆息するヨハネの前に現れたのはハナマルであった。
 

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ヨハネ「いやいや、忙し過ぎるでしょ。見てるだけで肩こっちゃう」
 
ヌマヅの町で働く仲間を紹介したいというハナマルに連れられ、旅館の娘チカや行政局執務長官のダイヤと出会ったヨハネが驚かされるのは彼女達の仕事ぶりだ。たくさんの客を迎えてそのトラブルにも動じず対応するチカ、そして部下からのいくつもの報告にその場で判断を下していくダイヤ。ヨハネは「わたしには無理」と半ば呆れ気味に二人を眺めるが、ここにはある種の不思議が含まれている。そう、今のヨハネにとってチカやダイヤは"魔法"使いも同然なのである。
 
不思議な杖を持っているヨハネは魔法を使えず、そうでないはずのチカやダイヤが魔法じみた働きを見せる。両者を分けるのはもちろん、相応の金銭の存在……ではない。
 
 

2.魔法の対価

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ハナマル「お仕事は、お金だけじゃないずらよ」
 
自分はチカやダイヤとは違うもっとアメイジングな仕事が、ドラマチックな人生がほしい。帰路、そんなことを考えながらヨハネはハナマルのお菓子売りの仕事を見る。彼女も彼女で熱心な働きぶりだが、たくさん売っていたにも関わらずその財布に入っている売上はわずかなもの。ハナマルを魔法のように働かせる対価は、金銭ではなかった。
 

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リコ「もしこの子をわたしに預けていただけるなら、協力費としていくらかお支払いします!」
 
またヨハネは動物学者のリコから一緒に住む狼獣のライラプスを研究させてほしいと持ちかけられるが、高額の研究費に目が眩みそうになるも家族同然の存在をお金には替えられないと結局は断る。先立つものは金とは言うが、だからと言って金銭が全ての対価になり得るわけではない。では、魔法に必要な対価はいったい何か? 占いの館へやってきた何人ものお客さんを通して、ヨハネはそれに触れることになった。
 

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お客さんとはいうが、彼らは別にヨハネに占ってもらおうとやってきたわけではない。ヨハネが頼まれたのは遊んでなくしてしまったボールを探してほしいだとか、荷物を一緒に運んでほしいだとか、隣の家まで伸びてしまった木の枝を切ってほしいだとかいった雑事……ヨハネが望んでいたのとは正反対の、自分にしかできないどころか誰にでもできるような仕事に過ぎない。けれど「仕方がない」と引き受けたにも関わらず、ヨハネの表情は笑顔になっている。当然だろう、特別な力を持つ自分ならできると深く考えずに始めるも閑古鳥の鳴いていた占いと違って、この時彼女は人々に求められている。特別でない仕事がしかし、特別な充足感をヨハネにもたらしている。
 

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ライラプス「なんかこういうのも楽しいね!」
ヨハネ「うん!」

 

金銭なしで人が生きて行くのは難しい。ヨハネの味わった充足感は必ずしも万能のものではなく、金銭的な対価を低く抑えるために悪用される場合も珍しくない。けれど人が何かをすることは、必ずしも金銭的対価だけが理由ではないはずだ。誰かが喜んでくれたり自分を求めてくれた時、そこには金銭に替えられない見えない対価が発生している。見えない対価があればこそ、人は時に単純な利得では割に合わない行動をとることができる。それは誰にでもできることがその人にしかできないことに変わる不思議な瞬間だ。不思議が存在しないはずの現実でも起きる、まるで"魔法"のような瞬間だ。
 

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ハナマル「ヨハネちゃん! はじめて名前を呼んでくれて嬉しいずら!」
 
魔法には対価がいる。けれどそれは金銭ではなく、客観的にはバカバカしく思えるような出来事で果たされる。初めて名前で呼んでくれただとか、心から助けを求める声であるとか、私達が魔法使いに変わるにはそんな些細なものがあればいい。些細でバカバカしくなければ、不相応に思えなければそこに不思議は存在し得ない。
誰かに求められる幸せ。その心地よさこそ、魔法のために必要な対価なのである。
 
 

感想

というわけで幻ヨハの2話レビューでした。なんというか童話のようで、良い意味で子供が見るようなまっすぐな作品だなと思います。お調子者で謙虚でなくて無駄に自信はあるけど不安でもあるヨハネ、考えてみると古き良き失敗する主人公らしさがある。
 

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チカ達がミリオンンダラーなる姿で現れるCパートもコミカルではありますが、求める声に応じて不思議を為すという意味ではちゃんと本編に則っていてレビューを書く際に助けられました。ダイヤが早めに登場してくれて嬉しかったですが、ルビィとの関係やOPでの服装などまだまだ秘密はありそう。3話がどんな感じになるか楽しみです。

 

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