嘘つきと正直者ーー「ダークギャザリング」7話レビュー&感想

Ⓒ近藤憲一/集英社・ダークギャザリング製作委員会

騙し騙され「ダークギャザリング」。7話ではいよいよお化け集めがスタートする。お化けと人の知恵比べはしかし、嘘だけでできてはいない。

 

 

ダークギャザリング 第7話「Sトンネル」

darkgathering.jp

1.嘘で嘘を洗う

夜宵と共にお化け集めをすることを決心した螢多朗。都内でも有数の心霊スポット、Sトンネルへ向かった彼らを待つものは……?

 

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呪いに呪いで立ち向かう「ダークギャザリング」。自身と恋人詠子の呪いを解こうとする螢多朗、母の霊を取り戻さんとする夜宵の協力体制が前回遂に成立。彼らは詠子を含めた3人でSトンネルなる心霊スポットで悪霊と遭遇するわけだが、今回注目したいのは「騙し合い」という点である。バックミラーにだけ映るだとか車の前を突然横切るだとか、心霊現象はとかく人を騙して不意を突くものが多いがこの7話は特に顕著だ。悪霊は幻覚を操って自分が捕獲されたと思い込ませ、帰宅後就寝した螢多朗を襲ってまんまと飲み込んでしまった。対幽霊のスペシャリストである夜宵すら一度は騙されてしまったのだから、その周到さは相当なものと言えよう。もちろん夜宵の方もただ騙されて終わりではなく、彼女は彼女で深夜に螢多朗の家に入るために嘘八百を並べたり部屋内での悪霊の位置を事前に確認し幻覚対策を取っておくなどして相手を出し抜いている。今回はバトルものの基本である知略と知略のぶつけ合いによく則った内容なのだ。

 

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夜宵「今度こそ、捕まえた」

 

車の前に幽霊が現れたら遠慮なくはねる。人質を解放すれば見逃してもらえると思わせてそのまま絞め落とす。人形に封じられても幻覚を利用してこっそりリュックに紛れ込もうとする……悪霊との戦いは嘘と嘘の対決であり、そこには際限のない騙し合いだけの地獄のような光景が広がっている。だが、嘘しかないのかと言えばそれもまた誤りだ。

 

 

2.嘘つきと正直者

夜宵達と悪霊の戦いは血も涙もない騙し合いの連続だが、そこには嘘しか存在しないわけではない。何が?と言えば正直さがある。誰が?と言えば、それは誰あろう螢多朗のことだ。

 

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螢多朗「ちょおおお、録音されてたの!?」

 

一時引きこもりになったため人との付き合いが不得手な螢多朗は、正直さの塊である。前回両思いであることを確認した詠子と自分は付き合っていると言えるのか悩んだり、お化け集めに参加すると決めても恐怖心は隠せなかったり……本心では恐怖を愛していると1話で指摘されているが、基本的に彼は腹芸の類ができない。今回彼は悪霊に騙される他に告白を録音していた詠子に自分達が恋人だと明言させられるが、正直さに端を発している点で両者は全く同じものなのだ。

 

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螢多朗「う、う、う……」
夜宵「これは期待」
詠子「できそうですね!」

 

螢多朗はおよそ人を疑うことを知らず、その正直さはほとんど愚かさの域に達している。だが人が、世の中が賢さだけで回っているかと言えばそうではあるまい。正直で臆病な彼は一種のリアクション芸人でもあり、心霊話を聞いたり悪霊を見ればすぐに恐怖をあらわにするが本作がホラーとして成立するのはそのお陰だ。夜宵や詠子のようにオカルトを見聞きしてもワクワクしたり落ち着いたままの相手ばかりでは悪霊も怯えさせがいがないし、私達も楽しめてはいまい。彼抜きの「ダークギャザリング」などあり得ない。いや、詠子も夜宵もあり得ない。

 

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夜宵「螢多朗と会ってから1ヶ月、霊の捕獲率は格段に上がっている。わたし達は同じチームの違うポジションのようなもの、それぞれ役割をまっとうすればいい。……頼りにしている」

 

既に明らかになっているように、一見世慣れしている詠子は”螢多朗中毒”の社会不適合者である。告白の録音にしても普通の相手なら引かれてもおかしくないところで、それを受け止められるのは螢多朗だけだ。また夜宵にしてもお化けを集めてお化けを食い殺すなどという発想は常人なら聞いた瞬間に縁を切りたくなる常軌を逸したものであり、受け入れるのに時間はかかってもけして拒絶はしなかった螢多朗の存在は彼女にとって本当にありがたいものだったことだろう。夜宵は今回「頼りにしている」と珍しく照れながら本心を打ち明けるが、そんな風に正直・・になれる相手は両親を失って以来初めてなのではないだろうか。

 

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夜宵「れっつごー!」
詠子「すと!」

 

血で血を、もとい嘘で嘘を洗うような状況で生まれるのは、万人の万人に対する戦いとでも呼ぶべき無秩序である。それが私達を疲弊させ精神の休まるところをなくしていくのは言うまでもない。知を求められる世の中でこそ、必要なのはバカ正直な人間だ。むき出しのホンネで生きるのでなく、綺麗事に過ぎないはずのタテマエを本気で信じるような人間なしには社会は維持できない。人が人でいられる場所は保てない。螢多朗、夜宵、そして詠子の3人は、どうしようもなく一般社会から逸脱してしまった彼らが社会復帰するための釣り合いを取る組み合わせでもあるのだろう。

嘘つきなだけでも、正直なだけでも私達は生きてはいけない。相反する両者の蠱毒を経てこそ、そこに人間が生まれるのである。

 

感想

というわけでダークギャザリングの7話レビューでした。今回はすんなり書くことの方向が決まって一安心。睡眠に努めたお陰かしらん(ほっとくとまたすぐ寝不足になるのだが)。夜宵にとって螢多朗は甘えられる相手なのだ、というのが分かる回だったのだと思います。煽りも含めて甘えの内。

さてさて、ラストに出てきた4人目の主要キャラクターはどんな役割を担うのか。次回はまた新展開になりそうで楽しみです。

 

 

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