廓の中――「ダークギャザリング」22話レビュー&感想

Ⓒ近藤憲一/集英社・ダークギャザリング製作委員会

誰も彼もの「ダークギャザリング」。22話では旧I水門での戦いに決着がつく。人は皆、逃れられない廓の中にいる。

 

 

ダークギャザリング 第22話「旧I水門/炎の廓」

darkgathering.jp

1.くすぶり続ける諸共の炎

魄啜繚乱弟切花魁(はくていりょうらんおとぎりおいらん)3つ目の呪い・炎上楼閣。それは相手を灼熱の牢獄に捕え魂をすする蝶の炎で燃やす恐るべきものだった。旧I水門の少年の霊は膝を屈し、勝負はついたが……

 

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螢多朗「つい、今の今まで……!」
夜宵(狙われていた。気取られないように、陽気に踊っていると見せかけていただけ……)

 

人は変わらぬ「ダークギャザリング」。22話は旧I水門での戦いの終わりと新たな敵の登場回だ。主人公である夜宵の奥の手・花魁の霊と危険度Sランクの心霊スポットでも群を抜いて強いと評された少年霊の対決は花魁の勝利となったが、事態はそれで終わりとはならなかった。夜宵を憎む花魁は炎の蝶を彼女達にもさしむけ、ここぞとばかりに燃やしてしまおうとしたのだ。前回のレビューで書いたように花魁の炎は敵味方「諸共」に焼く炎であり、夜宵達もまた例外ではなかった。

 

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螢多朗「それって、H城址の霊を狂わせていた呪物じゃ」
夜宵「うん、どうやらそのペアっぽい」

 

「諸共」……交わることなき別物と見えた二つが、強大な何かの前に一緒くたになることは珍しくない。間一髪花魁の再封印と少年霊の捕獲に成功、少年霊に殺害された霊能者・闍彌巫子(しゃみなぎこ)の遺品を確認していた夜宵達はそこに霊を鎮めるどころか凶暴化させる呪物を発見して戸惑うが、彼女が実は幽霊に「なり代わられて」いたのではとの仮説の前では霊能者と呪物は諸共・・の存在たり得る。また夜宵は自陣に迎えた少年の霊が生前受けた理不尽な仕打ちに同情する際に自分の過去も思い出しているが、そこには家族を奪われ悪霊に対する悪霊とでも呼ぶべき存在となった自分と少年を諸共の存在と感じている節も見受けられる。再封印にこそ成功しても、何もかもを諸共に焼く花魁の炎はまだくすぶっていると言えるだろう。

 

 

2.廓の中

諸共になったものを再度分けるのは難しい。これは今回登場した巫子の姉・弥子(なみこ)の存在からも言える。

 

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弥子「賢い奴は同系色の人間となり代わる。アテにしちゃいけないよ」

 

例えば夜宵の仲間である螢多朗や詠子は巫子と双子でほとんど外見の変わらない弥子の登場に大いに混乱したが、見分けるのが難しいのはこれに限った話ではない。弥子はなり代わりがあれば魂の色が変わるから見抜けると教える一方で賢い霊は同じ色の相手になり代わるとも指摘しているし、死んだ妹に対する弥子の口ぶりを螢多朗達は冷たいと感じたが実際は彼女の心は怒りに燃えていた。とはいえ諸共であることは悪いことばかりではなく、写真に写った魂の色からなり代わり=妹の死を察していた弥子にとって、亡骸の確認が夜宵という有望な霊能者との出会いと同時になったことなどは諸共がせめてもの救いになった事例に挙げられるだろう。

 

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警部「どうなってんだこりゃ……」

 

諸共に、ごったにする力は強大である。巫子のバラバラ死体は警察に運び込まれ、警官の一人は手口が全く分からないことに怯えていたがそんな彼に待っていたのは巫子になり代わっていた悪霊による無惨な変死……自らも原因不明の死体になる末路であったし、今回のラストでその悪霊を回収したなり代わりの一人と思しき人物は夜宵と同年代の少女と来ている。彼女は悪霊から旧I水門の霊を捕まえた人間の一人が子供と聞いて「それは要注意人物ですわね」と反応しているが、注意が必要なのはむしろ夜宵達の障害となるであろうこの子供の方であろう。物語の観点から見た時、「要注意人物」という台詞は夜宵と少女が諸共になるように作用していると言える。

 

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少女「それは……! 要注意人物ですわね」

 

1話で「クレイジーオカルトキッズ」とまで言われた夜宵は、本作を象徴するいわばオンリーワンの存在のはずであった。しかし今回登場した少女が夜宵の存在になり代わる可能性を秘めているように、全てのものは諸共にされる恐れから無縁ではない。それはある意味、誰も彼もが廓の中にいるのと――花魁の炎上楼閣の中では少年霊だろうが浮遊霊だろうが肉団子だろうが燃えてしまうのと同じではあるまいか。

自分達は安全圏にいると考えていた螢多朗達が気付けば花魁の炎の蝶に焼かれそうになっていたように、私達はけしてなんの制約もなく自由自在に動き回れる存在ではない。壁にぶつかるまで、魂をすすって燃える炎に焼かれるまで気付けないだけに過ぎない。

 

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夜宵「……旧I水門の霊、ゲットだぜ」


人であろうと悪霊になろうと、私達は結局廓の中に閉じ込められている。その不自由さだけは何人たりとも変わりはしないのだ。

 

 

感想

というわけでダークギャザリングのアニメ22話レビューでした。副題の半分が「炎の廓」ですし、廓でくくっていけば今回の内容はそう大きくは外れないだろうなと。話数としては次章が本アニメのラストになりそうですが、夜宵と同年代の少女がトリの相手らしいのは良い区切りなのではないかと思います。

 

Ⓒ近藤憲一/集英社・ダークギャザリング製作委員会

誰も彼も焼き尽くそうとする花魁、美しゅうございました。日笠陽子さんの演技もあいまってとても良かったです。

 

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