夜と宵の狭間――「ダークギャザリング」24話レビュー&感想

Ⓒ近藤憲一/集英社・ダークギャザリング製作委員会

暗闇を征く「ダークギャザリング」。24話では水面下でなり代わりとの戦いが始まる。それを導くのは、夜と宵の狭間のようなか細い道だ。

 

 

ダークギャザリング 第24話「学校の怪談/悪夢」

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1.脱出の理由

間一髪のところで教師・坂下の霊からクラス委員長の曜子を救うのに成功した夜宵。果たして学校の夢から脱出できるのだろうか?

 

Ⓒ近藤憲一/集英社・ダークギャザリング製作委員会

蛇の道は蛇の「ダークギャザリング」。23話は学校の怪談を巡る事件のてん末と、今後の大戦(おおいくさ)を予感させる引きの回だ。まず学校の怪談の怪談を巡る事件については終わりは案外あっさりしたもので、夜宵は夢の世界に閉じ込められるも同級生の一人曜子を助け、悪霊化した教師の霊を撃退し無事現実へ帰還。学校全体を巻き込んだ大規模な出来事だったにも関わらず、トラウマを抱える者こそあれ死者や負傷者を出さずに事件を解決することができた。そしてこの事件の終わりでもっとも注目すべきは、夜宵は教師の霊を手持ちの霊で食い殺したりはしなかった点だろう。

 

Ⓒ近藤憲一/集英社・ダークギャザリング製作委員会

夜宵「先生の生前の記憶を見た。無実だった。そして、死後もくだらないことに巻き込まれただけだった。だからこそ、せめてちゃんと成仏してほしい」

 

夜宵は昏倒した同級生達を救うため、脳の化け物のようになった教師・坂下の霊を自分の宇宙人人形の霊に捕食させたが、暴走していない坂下の本体とでも呼ぶべき部分については食うことを止めた上に成仏までさせた。夢の中で見た記憶や同級生のドロシーの話から、生前の坂下がえん罪から自死を選んだこと、死後もドロシーのせいで悪霊化したことを知ったためだ。だから彼女は襲われた身でありながら坂下に手を合わせ、清めの塩で成仏の手助けすらしてみせた。そしてここに、年齢や霊を強化する手管だけならそっくりに見えるドロシーと夜宵の最大の違いがある。

 

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夜宵「今まで通り戦場を用意し続けよう、わたしに協力する限り。体に染み付いた戦いの記憶から、力と過去を手繰るといい」

 

夜宵の行動から見えるのは、変わらない表情とは裏腹の情け深さだ。彼女は確かに悪霊に容赦がないが、一方で旧I水門の少年霊のように同情すべき相手には礼を尽くしもする。ほとんど律儀とすら言えるほどで、それが仲間である螢多朗達からの信頼を勝ち取る結果にも繋がってきた。


重瞳のため現世と幽世が重なって見える彼女にとっておそらく、人か霊かの違いにさほど意味はない。これはドロシーのように生者の体を霊が奪った「なり代わり」にはけしてたどり着けない境地であり、共通点だけなら似て見える二人を決定的に分かつ差異だ。前回23話のドロシーの策略は夜宵を夢の中だけでなく同類の「枠」の中に閉じ込めるものでもあったが、夜宵は坂下への振る舞いで見事その枠から脱出してみせたと言えるだろう。

 

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2.夜と宵の狭間

前回ドロシーがもたらした、そっくりな者を閉じ込める「枠」。この概念の役割は事件の解決だけでは終わらない。

 

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ドロシー「わたくしが色々教えて差し上げますわ。その内、同族の仲間にも紹介しますわね」
夜宵「楽しみ」

 

例えば夜宵は事件後のドロシーとの会話で彼女がなり代わりと気付くが、直後に彼女が採った行動はドロシーへの攻撃ではなく自分もなり代わりだと偽ることだった。取り入って情報を引き出そうというのだから大胆な話だが、夜宵はつまり自分とドロシーをなり代わりの「枠」に入れることで敵味方の違いを消してしまったのだ。

また曜子は夜宵を迎えに来た従姉妹の詠子と出会うが、恐怖を愛好する彼女との出会いは曜子にとって常識の「枠」から外れた自分を認識する機会にも、逆に同志という「枠」に自分を当てはめる機会ともなった。事件後のやり取りでも「枠」の概念はそこかしこに見え隠れしているのである。

 

Ⓒ近藤憲一/集英社・ダークギャザリング製作委員会

詠子「あなたはわたしと同じ、底知れぬ恐怖に恋い焦がれる同志みたいだから」
曜子「はい……っ」

 

夜宵とドロシー、曜子と詠子。二組のやりとりが示すように、「枠」がもたらすのは良い結果だけでも悪い結果だけでもない。肯定だけでも否定だけでもいけない、と言ってもいい。だが、考えてみれば本作はその両面性を最初から描いてきたのではなかったか。なにせ本作は霊能力で悪霊を浄化するといった内容ではなく、むしろ毒を以て毒を制すように悪霊で悪霊を打ち破ってきたのだから。

「やばいオバケを集めて悪霊を食い殺す」夜宵の発想はつまるところ、悪霊という「枠」を肯定すると同時に否定する――両者の狭間を行く発想以外の何者でもあるまい。ある意味、なり代わりからの情報収集などは夜宵にとって平常運転の内に過ぎない。

 

Ⓒ近藤憲一/集英社・ダークギャザリング製作委員会

弥子「あっはははは! やっぱあんたとんでもないガキだねえ!」

 

なり代わりの情報を集めるという夜宵の計画に当初呆れ気味だった霊能者・闍彌弥子が最後には痛快とでもいった表情で絶賛するように、夜宵は「とんでもないガキ」だ。ドロシーごときでは及びもつかない規格外の存在だ。

頭脳や身体が優秀だからではなく、夜と宵の狭間の如きか細い道を進めるからこそ寶月夜宵はオンリーワンの本作主人公なのである。

 

感想

というわけでダークギャザリングのアニメ24話レビューでした。坂下に見せた優しさだけでも夜宵とドロシーの違いは十分出ていたと思いますが、そこから更に引き離してみせる圧巻の終わり。弥子さん、夜宵に出会えたのがもう嬉しくてたまらないでしょうね。螢多朗の出番がラストまでお預けなのもあって、夜宵に集中する24話でした。

さてさて、2クールに渡るアニメも次回でいよいよ最終回。原作は続くにしても映像作品としての締めにどんなものが見えてくるのか、楽しみです。

 

 

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