やり直せ! 100万人へのクライマックス――「真夜中ぱんチ」11話レビュー&感想

©2024 KADOKAWA/P.A.WORKS/MAYOPAN PROJECT

再生の「真夜中ぱんチ」。11話では真咲達が1話の場所に帰ってくる。繰り返しから抜け出すために必要なのは――

 

 

真夜中ぱんチ 第11話「【ご報告】失踪しました」

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1.陥った繰り返し

かつて一緒に活動した仲間と和解したものの、その様子を撮影した動画で再び炎上してしまった真咲。引き止めようとするりぶに罵声を浴びせ、彼女は飛び出してしまうが……

 

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ループする「真夜中ぱんチ」。11話は真咲が再び恐怖に囚われてしまう回だ。元メンバーだった動画チャンネル「はりきりシスターズ(はりシス)」の2人と仲直りできたまでは良かったが、その動画を見た視聴者はかえって真咲への敵意を露わに。更に彼女が今は「真夜中ぱんチ(マヨぱん)」の裏方をしていることが知られコメント欄は大荒れになってしまう。動画にまた出ようとようやく思えた決心をすっかりくじかれ、真咲が1人温泉へ逃げ出してしまうのも無理はない。

 

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真咲「私じゃないのかよ!」

 

真咲が陥っている状況、それは繰り返しである。彼女のはりシスの乙美への和解パンチもマヨぱんの1人十景のアンチコメントへの反論も、視聴者はかつての暴行や暴言の繰り返しとしか見ないから真咲自身も抜け出したはずの動画出演への恐怖に再び取り憑かれていく。逃げ出した先で休息に努めようとしても、思考はつい自分に向けられる視線への警戒やマヨぱんの皆のことに戻ってしまいリフレッシュできない……マヨぱんのリーダー、りぶと出会って生まれた変化が嘘のようなループぶりだ。しかも逃避先で動画チャンネルを確認してみればりぶが自分同様に失踪しており、繰り返しは真咲だけに留まらず周囲に拡大すらしてしまっていた。

 

動画配信者の枠から追い出され、けれどロクデナシのレッテルの枠から抜け出せない。りぶとの出会いで真そんなジレンマから抜け出せたように思えたのはただの錯覚だったのか? 真咲はこの11話、自分を、いや自分達を捕える「枠」が想像以上に大きなものであると思い知らされることとなる。

 

2.やり直せ! 100万人へのクライマックス

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りぶが失踪したのは、逃げ出す際に自分が吐いた暴言がきっかけではないか? 拭いきれない疑念を胸に拠点である晩杯荘へ戻った真咲は、建物取り壊しの準備が進められマヨぱんの皆もいないことに愕然とする。取り壊しを中止させるためのチャンネル登録者数100万人達成にはまだ1ヶ月の猶予があるはずなのになぜ?……愛という人物が20年前りぶに送ったらしい手紙を彼女の部屋で見つけた真咲は何者かが自分を狙っているのを感じ逃げ出したが、1話の廃病院でりぶに追われた時よろしく走る彼女を助けたのは苺子を始めとした残りのマヨぱんメンバーであった。

 

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真咲は知る。りぶの失踪は事実であり、彼女は長い眠りに就こうとしているらしいこと。以前は20年に渡って眠ることで愛の記憶を封じており、おそらく今度は真咲のことを忘れてしまうであろうこと。眠りのためりぶが失踪した咎で100万人達成の猶予が1ヶ月短縮されてしまい、最終日である今夜苺子達は一発逆転の配信を行おうとしていること。そして――その舞台は1話で真咲とりぶが出会った廃病院であること。

 

まさしく急展開と呼ぶにふさわしい状況だが、同時にこれは繰り返しのようにも見える。りぶが一種の冬眠に入ろうとするのは2度目だし、廃病院が舞台となるのも2度目。ただ、状況が同じかと言えばそれも誤りだ。かつて愛が入院していたと知れば廃病院から受ける印象は変わってくるし、彼女はどうやら20年前に死んだらしいが真咲は今も生きている。全く同じなのはかつては真咲がりぶに声をかけ、今度はマヨぱんの残り4人が主導してどん詰まりから抜け出そうとしていることだけ……「やり直し」であることだけだ。

 

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苺子「実は私達……ヴァンパイアなんです!」
真咲「えっ……ええ!? それ言っちゃうの!? だって……ええ!?」

 

繰り返しとやり直しは一見似ているが同じではない。前者は陥ってしまうものだが、後者には明確な意思が必要だからだ。再度の炎上で真咲がくじかれたのはまさしくやり直す意思だったし、一発逆転の配信に臨む苺子達には1つの強い意志があった。なんと彼女達は、自分達がヴァンパイアであることを堂々とカミングアウトしてみせたのである。それはかつて軽はずみに能力を使ってしまいヴァンパイアの長たるマザーに叱責された時とは違う、明白な「やり直し」だ。そして自覚的な繰り返しであるやり直しは前と同じにはならない。マヨぱんが自ら正体を明かしたことはマザーから怒りの追手を差し向けられる結果となり、配信は何がどうなってしまうのか全く予測のつかない状況に持ち込むことに=繰り返しの「枠」から抜け出すことに成功したのであった。

 

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真咲「どうなるの……? どうなっちゃうのよこの生配信!」

 

人は繰り返しそのものからは抜け出せない。真咲がそうであるように、抜け出せたと思っても元の場所に戻ってしまうことがしばしばだ。けれど、間違えた先でもう一度踏み出すその足は以前と同じ道をたどらない。ちっぽけな違いかもしれないし上手くいく保証はどこにもないが、その1歩はもはや繰り返しであって繰り返しではなくなっている。

 

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本作はそう謳う。再び生きるとは、繰り返すのではなくやり直すことなのである。

 

感想

以上、マヨぱん11話レビューでした。本文中でも触れているように今回は急展開なので、ともすると冗長にやってしまいがちな状況説明を切り詰めるのに苦労しました。ゆきが本当に頼りになる回で、りぶがいない状況でよく仕切ってくれていたなと思います。撮影中心の回での出番も見てみたかったなあ。しかしやっぱり映ってないだけで殴ってたか、真咲。
さてさて、次回はとうとう最終回。はたしてチャンネル登録者数は、りぶの行方と秘密は、物語の結末は。とても楽しみです。

 

 

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