3機の理由――「ゲッターロボ アーク」2話レビュー&感想

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
新たなゲッターチーム誕生となる「ゲッターロボ アーク」2話、アークは第4世代のゲッターロボと説明される。共通した定義やコンセプトを持つゲッターロボは4度目の「繰り返し」を迎えたわけだが、それはただ同じことの繰り返しではない。
 
 

ゲッターロボ アーク 第2話「運命の子ら」

早乙女研究所で神隼人と顔を合わせる拓馬。隼人は拓馬と獏にカムイと共にアークに乗れと告げる。拓馬の母の仇の手掛かりは掴めなかったものの、運命の輪は大きく回り始める。拳で理解し合い、急速に絆を強める拓馬とカムイ。新しいゲッターチームが誕生した。そんな中、早乙女研究所の上空に時空転位ポイントが開き敵の大軍団が襲来する。D2部隊が出動するも、まだ合体すら成功させたことのない拓馬たちは早乙女研究所から戦況を見守ることしか出来なかった。
公式サイトあらすじより)
 

1.否定される繰り返し、肯定される繰り返し

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
2話の冒頭では、19年前に竜馬達に置いていかれた隼人の過去が回想される。「また俺を、俺だけを生き残らせるつもりか!」と隼人は叫ぶが、重要なのは「また俺を、俺だけを」の部分であろう。彼は何より、自分だけが生き残る歴史の「繰り返し」に対して怒りを覚えている。
 
「繰り返し」は人類の歴史に付きものだ。どれほど歴史の教訓を積み重ねても政治が腐敗するのは中国史を見れば分かりやすいし、新型コロナを巡る日本の政策はしばしば太平洋戦争からの進歩の無さが指摘される。人の世は愚かさの繰り返しである。
 

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
しかしそのように隼人が憤る一方、本作は必ずしも否定的にばかり繰り返しを描いていない。新たなゲッターチームの流拓馬や山岸瀑はかつてゲッターを操った竜馬やタイールの血縁だし、彼らとゲッターD2部隊の喧嘩を隼人は「いつの世代のゲッターチームも同じ」と笑う。「繰り返し」には変わりないのに肯定されているのである。
 

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
「繰り返し」に対する肯定と否定を分けるものは何か? それを知るためには、私達もゲッターの導きを受けねばならない。今回ゲッターロボの歴史や特性が解説されるのは初めてゲッターに触れる視聴者のためだけではなく、「繰り返し」の肯定と否定を分ける鍵を教えるためでもあるのだ。
 
 

2.ゲッターロボの持つ「繰り返し」の本質

 D2部隊の隊長・伊賀利が説明するゲッターロボの特徴は、大きく分けてこの2つだ。
 

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
・宇宙から降り注ぐゲッター線を動力としていること
・3機のゲットマシンが異なる組み合わせで合体し、3つのタイプのロボットに変形すること
 
前者、ゲッター線が単なるエネルギーではないことはこれまでも描かれているが、この2話で本作初出となるのは後者、3機のゲットマシンの合体変形についてである。ゲッターロボの変形はけして、1つのロボットがそのまま姿を変えるようなものではない。分離し、異なる組み合わせで合体するプロセスを必ず経なければならない――「繰り返さなければ」ならない。ゲッターロボの本領である合体変形とはすなわち、「繰り返し」なのである。
 
 

3.繰り返しに一線を引くものは

ゲッターロボはその本質において「繰り返し」を内包している。ただ、合体変形は繰り返しだが全く同じではない。全く同じ3機が合体を繰り返していても同じにならないのは言うまでもなく、組み合わせ・・・・・が違うからだ。
 

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
隼人「頼むぞ。これが最後のゲッターでいい、動いてくれ!」
 
思い返せば隼人は回想の時、死んでも構わないと思い詰めているようでもあった。置いていかれた憤りはけして帰らずの旅に出ることではなく、その組み合わせから「またも」自分が外されたことに対してこそあった。そこにこそ、否定される繰り返しはあった。
 

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
拓馬「今度は俺が獏に付き合う番だ」
 
拓馬は自分が竜馬の息子だからという理由でゲッターロボに乗ることは否定したが、仲間である獏が残ると言えばそれには付き合うことにした。彼にとって獏は命の恩人であるから、今度は逆に自分が彼を助けねばと――「組み合わせを変えて繰り返さねばと」思ったからこそ、拓馬はゲッターロボに乗ることにしたのだ。そこにこそ、肯定される繰り返しはあった。
 
 
ゲッターロボは合体変形を繰り返し、しかし異なる組み合わせで特性を変化させ事態を打開してきた。それは人の世もまた同じだ。人の歴史は愚かさの繰り返しだが、関わる者が違えば全く同じ結果にはならない。些末な違いに過ぎないかもしれないが、その変化の積み重ねによってこそ今の私達の社会がある。
 

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
ゲッター線を動力に3機のマシンが合体変形するロボットの戦い。ゲッターロボサーガとはその繰り返しだが、搭乗する者の組み合わせによって物語は新たな境地を開いてきた。なら、拓馬達3人も紛れもなくその変化を繰り返すだろう。新たな組み合わせによる繰り返しは、これまでにないものを切り開いていく。
組み合わせが変わる時、繰り返しはループでなく螺旋に変形するのである。
 
 

感想

というわけでゲッターロボアークの2話レビューでした。まさかゲッターロボが3機のゲットマシンで構成される理由の読み解きをやる日が来るとは思わなかった。番組を通して僕も確実にゲッター線を浴びている……あらすじで言えばものすごくお馴染みな感じなのに圧倒的なスケール感だ。
 
カムイの「そんな眼で見るな」の"繰り返し"なんかも含め、修羅の世界を生きるキャラクターが確実に好きになれる2話でした。次回も楽しみです。
 
 

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