激突する境界――「境界戦機」7話レビュー&感想

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©2021 SUNRISE BEYOND INC.
きな臭さを増す「境界戦機」。7話ではシオンがアモウ達に合流し、またブラッド大尉の率いる部隊がゴーストと激闘を繰り広げる。その中で見えてくるのは、それぞれのホームグラウンドの所在と激突だ。
 
 

境界戦機 第7話「討伐」

1.異郷のホームグラウンド

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シオン「元々は八咫烏の活動を支援する協力員だったんです。でもこの子にパイロットに向いてるって言われて……」
 
前回アジア軍・オセアニア軍を蹴散らし七面六臂の活躍を見せたシオンだが、彼女はなんとこれが初陣であった。元は八咫烏の活動を支援する協力員だったというが、おとなしい性格からすれば納得の出自だろう。だが自律思考型AIのナユタに見出された彼女のパイロット適性は前回証明された通り。薙刀も習っていたシオンのホームグラウンドは戦場にこそあった。
 

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ブラッド「父達の目を盗んで忍び込んだコクピットで、わたしはぐっすりと眠ることができた。スピアーズの家に引き取られてから初めて」
 
似つかわしくない場所の方がホームグラウンドに適している。この意外性は、北米同盟のブラッド大尉の過去や日本への態度からも見て取れる。幼い頃の彼は家での暖かな生活に馴染めずベッドの上では眠れぬ日が続いていたが、そんな彼がぐっすりと寝られたのはなんとアメインのコックピットの中であった。また彼は意外にも日本のたい焼きが気に入っており、加えて日本が北米同盟に植民地化されることを必ずしもよく思っていない。ブラッドにとっては、軍人として赴いたこの日本が意外にもホームグラウンドとなっている。だから、自分を養子にとってくれたスピアーズの家が嫌いではなくとも彼はそこへ帰る気になれない。
 

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ナユタが魂の名前としてイタリア紳士アンジェロを名乗るように、自分の過去が分からずともガイがアモウと一緒にいることを選ぶように。ホームグラウンドは元いた場所にあるとは限らないのである。
 
 

2.激突する境界

ホームグラウンドは元いた場所にあるとは限らない。しかしホームグラウンドを保つのはけして簡単なことではない。
 

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ブラッド「それでは中隊規模の数がいる。いかにアジア軍がオセアニアに目を向けてるとは言え、見逃してはくれまい」

 

今回ブラッドはゴーストを捕獲もしくは破壊するようにと指令を受けるが、ゴーストの潜伏先はアジア軍の支配域であり北米同盟とて好き放題にはできない。アジア軍を刺激しないよう彼が少数精鋭の有人機でゴーストに挑むのはすなわち、そこを自らのホームグラウンドとして保つための方法である。
 

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ハーディー「ジャミングだと!?」
 
またゴーストに搭載された自律思考型AIは戦闘の中でも恐るべき学習能力を発揮し、ブラッドが見込んでいた有人機との対戦経験の薄さのアドバンテージは早々に吹き飛んでしまう。どころかゴーストはジャミングやハッキングを駆使し、彼の部隊の敵味方の図式すら崩してしまう始末。
 

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ゴーストはブラッドとの戦いを通じて己のホームグラウンドを――版図を広げている。それはつまりブラッドとゴーストが、人間とAIが互いの境界線を激突させ押し合っているということだ。ブラッドがAIにはできない戦術を披露し、一方のゴーストがコックピット相当部を撃ち抜かれても戦場を離脱するしぶとさを見せるのは、互いが互いに境界線を必死に守る姿の現れなのだと言えるだろう。
 

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ジェルマン「共に戦争というビジネスを盛り上げようじゃないか」
 
こうした境界線上の争いは、けして戦場に限らない。アモウや八咫烏にとって戦いは日本を取り戻すためのものだが、彼らに軍事技術を提供するブレンゾン社にとっては戦いはビジネス。ともすればアモウ達は、ブレンゾン社の境界線に押されて死の商人の片棒をかつぐだけの存在になりかねない危うい立場にあるのだ。
境界線を守るために必要なのは、けして武器を手にとった戦いだけではないだろう。次回はどうやら、八咫烏の内実に一歩踏み込む話が見られそうだ。
 
 

感想

というわけで境界戦機の7話レビューでした。当初は「相手を自分のフィールドに乗せるやり合い」みたいなことを考えたのですが、全体への適合率が微妙に低いし"境界"っぽさがないよなと脳内で赤信号が灯ってストップ。その後、異郷がホームグラウンドという考えなら適合率的には問題無さそうだと書き始めてみた結果、「ホームグラウンドの押し合い=境界線の押し合い」という結論にようやくたどりつくことができました。
 

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ゴーストに乗っ取られたストークキャリーのパイロットはどうなったんだろう?と思いましたが、ブラッド大尉が撃つのを全然ためらわないところを考えるとワイヤークローで刺された時に死んだと考えた方が角が立たないかしらん。あんまりそういう位置には見えないが。
 
 

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