同舟と異夢の境界――「境界戦機」22話レビュー&感想

©2021 SUNRISE BEYOND INC.
敵味方入り乱れる「境界戦機」。22話、アモウとアレクセイの逃亡劇は意外な損害を受ける。異なる立場は、異なる心を意味しない。
 
 

境界戦機 第22話「逃亡者」

 

1.両勢力内の境界

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アモウ「アレクセイさん、こんなもんでいいかな」
アレクセイ「ほう、なかなかやるな」

 

北米同盟の議員の狙撃を指示した疑いをかけられたアモウとアレクセイの逃亡が描かれる22話だが、強調されるのは分散や分担の重要性だ。ユーラシア軍のアレクセイは人目につかぬよう補佐官と分かれてアモウと行動しているし、新日本協力機構は彼らを救おうとするがアジア軍やオセアニア軍はあくまで協力者であり主体は八咫烏の宇堂達にある。手を取り合っているからといって立場や行動まで同じわけではないのだ。しかしこれはけして、敵対する北米同盟に対し彼らが鈍重になることを意味しない。
 

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スピアーズ「しかし一体どうやって逃亡などと……誰か手引した者がいるのか? 心当たりは?」
ブラッド「いえ、何も……」

 

北米同盟のスピアーズ副司令は息子にして部下であるブラッド大尉に追撃を命じ彼も従うが、両者はけして信頼し合っているとは言い難い。スピアーズはブラッドを切り捨てることになっても構わないと考えているし、ブラッドは自分がアモウ達を逃亡させたことをスピアーズに報告していない。新日本協力機構とは逆に、彼らは立場や行動を共にしているが手を取り合っていないのだ。役割に境界線を引いているのがアモウ達、心に境界線を引いているのがブラッド達と言ってもいいだろう。
 
 

2.同舟と異夢の境界

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アモウ達の新日本協力機構とブラッド達の北米同盟。両者は共に一つの組織の中に境界線を抱えているわけだが、ここで注目したいのはアレクセイの副官ダリアの台詞だ。彼女は八咫烏の一員である馬﨑が自分の能力傾向を把握し過度に立身出世を望まない姿を称賛し、こう述べている。
 

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ダリア「軍隊はいかに意思統一を果たすかが作戦正否の鍵となる。自分の長所や短所、得手不得手を把握している人間は強い……我々は新日本構想のパートナーとして、正しい相手を選んだようだ」
 
意思統一を果たすとはすなわち、垣根をなくすことだ。境界線を越えることだ。つまりアモウ達にとっては組織の違いを越えられるか、ブラッド達にとっては信頼の有無を越えられるかが正否を左右する。そしてこの22話、両者はいずれもそれを果たしている。
 

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馬﨑は今回、アモウとアレクセイの逃亡作戦を補助する中で戦死する。正確には、伏兵によって機体を損傷したダリアをかばってその命を散らす。"日本人"のことだけ考えるなら命を懸ける必要はなかったはずだが、ダリアが既に組織の違いを越えた仲間だと感じていた故に彼は戦ったのだろう。そしてアモウ達は彼の死を心から悼むからこそ、戦場では兵士としての自分の役割を果たそうとする。
 

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ブラッド「これで私も、ようやく万全の状態で暴れることができる。ブレイディファントムで……」
 
またブラッドは先に述べたように、必ずしもスピアーズの忠実な駒として動いているわけではない。ただ真意の全ては明かされていないが彼にはゴーストを搭載した自分のアメインで暴れたい欲求があり、それには新日本協力機構との戦争を欲するスピアーズの目論見は都合がいい。どちらがどちらをどこまで騙しているのかは、少なくとも現時点では意味を為さない。
 

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境界線は一つではなく、そして常に動いている。ならば一つの境界線を引くことが、別の境界線を越える結果に繋がることもある。新日本協力機構の面々はそれぞれの役割に境界線を引くことで勢力を越えて心を一つにしているし、ブラッドとスピアーズは逆に自分の望みにはっきり境界線を引いているからこそ利害が一致し事実上の協力関係を築けている。アモウ達とブラッド達は境界線を挟んで勢力もありようも全く反対でありながら、その性質自体はむしろ極めて似通っているのだ。
呉越同舟のアモウ達と、同床異夢のブラッド達の戦いは果たしてどちらに軍配が上がるのか。勝敗を分けるものがあるとすれば、おそらくそれはこの不気味な均衡を崩す何かが姿を見せた時にこそ現れることだろう。
 
 

感想

というわけで境界戦機の22話レビューでした。馬﨑さん前々回の初対面でダリアと何かフラグ立ってるんだろうかと思ってたらまさかの死亡フラグだったとは。まあ死にますよねという感じだったリサ以来の名有りの死人ということでなかなか驚きです。残り4話、どういう落とし所に持っていくんでしょうか。
 
 

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