守るべき場所――「ブルーアーカイブ The Animation」10話レビュー&感想

(C)NEXON Games / アビドス商店街

守護すべきを探す「ブルーアーカイブ The Animation」。10話では場所を巡ってシロコ達が戦う。ホシノのいう「唯一意味のある場所」とはどんな場所だろう?

 

 

ブルーアーカイブ The Animation 第10話「唯一意味のある場所」

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1.見失いかける「場所」

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いつもと同じはずのその日、登校してきたアヤネが見つけたのはホシノの退学届と書き置きであった。あまりにも突然の別れにシロコ達が戸惑いを隠せない中、街は突如カイザーコーポレーションの攻撃を受け……

 

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見つめ直す「ブルーアーカイブ The Animation」。10話ではホシノがカイザーコーポレーションから打診されていた取引の内容がついに明かされる。それはアビドス高校が背負った借金の大半を帳消しにする代わりに己の身柄に関する権利の一切を売り渡し、カイザーコーポレーションの傭兵となるというもの……言ってみれば人間・小鳥遊ホシノの消滅であった。

 

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ホシノ「お願い、私達の学校を守ってほしい」

 

このおよそ非人道的な契約をしかしホシノは飲み、退学届と置き手紙を残してシロコ達の前から姿を消してしまう。確かに、金銭面で考えるならこれはアビドス高校という「場所」を守る最善の方法だろう。だが、ホシノが守ってほしいと願ったものは、彼女が言うところの「唯一意味のある場所」は本当にそれなのだろうか。否、そんなはずはない。

 

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果たしてこれで事態が解決となるはずはなく、アビドスの街はカイザーコーポレーションの兵士達から突如攻撃を受ける。いくら土地の権利を持っているとはいえ、どうしてここまで無法な行為ができるのか? 対応に向かったシロコ達が知ったのは、自分達のアビドス廃校対策委員会は非公認の組織に過ぎず、生徒会最後のメンバーであるホシノが去った今は何の公的な根拠も持たない事実であった。アビドスのものだとばかり思っていた土地が既にカイザーコーポレーションの手に渡っていたように、彼女達が守らなければならないと思っていた「場所」は現実には存在しない代物だったのだ。

 

 

2.守るべき場所

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目の前の敵の圧倒的物量、勝てたとしても返しようのない借金、ホシノがいなくなってしまった衝撃。シロコ達は拠るべき「場所」が見えないことに絶望する。メンバーの一人アヤネがほとんどくずおれてしまうのも無理もない話で、目には見えずともこの「場所」無しには人は立っていることすらおぼつかなくなってしまうのだ。だが、見方を変えればここには希望もまた存在する。窮地に陥ったシロコ達の前に現れそれを指し示したのは、かつて銃を交え時には共闘もしたアウトロー、便利屋68の面々であった。

 

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アル「仲間が危機に瀕しているんでしょ? それなのにくだらないことばっかり考えて、このまま全部奪われてそれで納得できるわけ? あなた達はそんな情けない集団だったの!?」

 

便利屋68のリーダー、陸八魔アルはシロコ達を叱咤する。この先には逆境と苦難しか待ち受けていないが、だから何なのだ、と。あなた達は仲間が危機に陥っているのに諦めるような軟弱な集団ではなかったはずだ、と。そう、現実がどれほど過酷だろうとそれはシロコ達の足元を揺るがしはしない。そんなことで諦めるくらいなら、返済が非現実的な借金があった次点でとっくに全てを投げ出している。彼女達の拠って立つ場所――それはホシノを含めた5人の居場所そのものだ。ホシノがいなくなったら、そしてシロコ達がシロコ達でなくなったら、目に見えないそれはいとも簡単に消え去ってしまう。

 

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シロコ「ホシノ先輩、前衛って大変だね……!」

 

この10話、便利屋68を加えた8人の戦いは確かに色々なアクションが描かれているけれど、そのハイライトは攻撃する場面にはない。「守られてばっかりじゃいられないから」とシロコが言うように、彼女がホシノの残した盾でバリアのようなものを展開するように、攻撃よりも大切なのは「守る」ことだ。今までホシノが影に日なたに守ってくれていたものを、居場所を自分達で守ることだ。そこには当然、ホシノを取り戻すこともまた含まれている。

 

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激闘の末になんとか勝利したシロコ達だが、戦いはまだ続いている。カイザーコーポレーション(に協力していた黒服)の真の狙いはホシノにこそあり、自分が騙されたと知ったホシノは絶望の淵に囚われている。事態はなんら改善などしていない。それでもシロコ達は、ホシノが守ってほしいと願った「私達の学校」を今回見事に守りきった。喪失と自失の危機の中、居場所を――自分達にとって唯一意味のある場所を完全には見失わなかったことこそ、シロコ達が真実を守り抜いた証なのである。

 

感想

以上、ブルアカのアニメ10話レビューでした。基本「既存の○○の概念がピンチ、でも○○の概念は一つじゃない」で進む本作ですが、それに当てはめて考えるなら今回の○○は場所だろうな、ということで。さてさて、「おじさん」であろうと頑張り続けたけどそれでも「大人」にはなれなかったホシノに笑顔を取り戻せるのか。先生に頑張ってほしいものですが。

 

 

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