近くて遠い水族館――「ブルーアーカイブ The Animation」8話レビュー&感想

(C)NEXON Games / アビドス商店街

海を見る「ブルーアーカイブ The Animation」。8話でシロコ達は水族館を訪れる。なぜ水族館なのだろう? それはどんな場所なのだろう?

 

 

ブルーアーカイブ The Animation 8話「秘密」

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1.青を記録する場所

ホシノの提案で水族館へやってきたシロコ達。普段は見られない海の生き物達に生徒達も、そして先生も夢中で……

 

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セリカ「あはっ、なんかパクパクしてる」
アヤネ「呼吸してるのかな?」
セリカ「たぶん……」

 

なぞらえる「ブルーアーカイブ The Animation」。8話は水族館に足を運ぶシロコ達が描かれる。アビドスを離れての息抜きということもあって、どの子も表情が穏やかでにこやかだ。根が真面目なセリカやアヤネは特に日頃の緊張感から解放された感があり、そんな姿を見れば誰だって来てよかったと思うことだろう。普段の姿から少し離れた、しかしけして異質ではない「近くて遠い」少女達がそこにはいる。

 

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セリカ「ねえねえ、あそこにサメもいるよ!」

 

「近くて遠い」。考えてみればこれは水族館そのものだ。生命の母でありしかし私達が暮らすことはもはや叶わない、海に生きるものを間近に保管した"ブルーアーカイブ"……そういう場所を目にした時、私達は普段の自分から少し離れた、しかしむしろ自分らしい自分に出会うことがある。シロコ達はもちろん先生だってここでは子供のようにはしゃいでしまう時があるし、熱帯魚を見てかわいいか美味しそうかに意見が分かれる場面では両派の違いが如実に出てもいる。そして、もっとも「近くて遠い」自分が現れているのはもちろん、水族館行きを提案した最上級生のホシノであろう。

 

2.近くて遠い水族館

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ホシノ「まあ、難しい理屈は置いておくと、逆に光を利用して身を守ったりもできるんだよ。それ以外にも敵を追い払ったりね」

 

ホシノは今回、自分ではいつも通りのつもりでいる。おそらく、努めてそう振る舞おうともしている。けれど魚達に関して饒舌になるのを始めとして、この日の彼女はどこかいつも通りでない。彼女が何かのっぴきならない事態にあるらしきことを知る私達は、クラゲの光のように明るい姿を見るほど反比例するような影も感じ取ってしまう。それはおそらく、主人公格のシロコも同様である。

 

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水族館で少女達は、目にする生き物のどれがホシノに似ているか例え合った。自称に重ねてオジサン、ふわふわした様子からクラゲ、動作のかわいさからペンギン……どれもがホシノと同じではなく、しかし一面の特徴を掴んだ「近くて遠い」生き物達。シロコは自分を何に例えるのか? ホシノは面白半分に尋ねたが、返ってきた答えは彼女をして予想もしなかったものであった。なんとシロコは、ホシノはクジラに似ているというのだ。

 

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シロコ「私はホシノ先輩の力になりたい。昔、先輩が私に手を差し伸べてくれたように」

 

背丈の小さな自分がなぜクジラなのか。さすがに驚きを隠せないホシノにしかし、シロコは似ている部分を並べ立てていく。眠りながら泳いでいるところ、近くにいても全体が見えないところ、そして、息を止めながら泳いでいるところ……シロコはホシノが無理をしていることを、いつもぐうたらして見える彼女の「近くて遠い」部分を的確に探り当てていた。だが、近くて遠いものとは言い換えるなら永遠に触れ得ざるものだ。目鼻の近くに見えたとして、そこに残る遠さを超えることはけしてできない。

 

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ホシノ「おじさんは嬉しいよー、ほんといい後輩を持ったなあ」

 

自分に何かできることはないか、シロコが勇気を振り絞って呼びかけてもホシノは事情を打ち明けることはなかった。彼女がいつも以上におどけた態度でごまかそうとするのは、シロコが信用できないからではなくその申し出が本当に嬉しいからだ。嬉しいからこそホシノはシロコを巻き込むまいとし、いっそう頑なに心を閉ざしてしまう。「近くて遠い」はこの時、越境の手段から壁の如きジレンマへと性質を変えてしまっているのである。言い換えるならそれは、水族館の――いや、ネジの飛んだようなこの世界でかろうじて保たれてきた”ブルーアーカイブ”の危機でもあろう。

 

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ホシノ「ありがとね、シロコちゃん。それでも私は……」

 

シロコ達にとって、水族館とは海に生きる生物を見る場所であると同時にそれだけの場所ではない。自分や世界を顧みる、いくつもの「近くて遠い」が揺らめく場所こそ本作における水族館なのである。

 

感想

以上、ブルアカのアニメ8話レビューでした。前フリの時から「なんで水族館?」というのが以前からの疑問だったのですが、今回で得心できた気がします。確かにこれは水族館でなければいけない。

 

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前回に引き続きですが、屈託のない表情を見せる時のセリカが本当にかわいらしくてですね。見ているだけで嬉しくなってしまいました。そしてその分、ホシノの楽しそうな様子を見ても寂しくなってしまう。正直、今回の内に皆の前から姿を消すのじゃないかと気が気ではありませんでした。さてさて、シロコではどうにもできない距離のジレンマを、先生は果たして解決できるのかしらん。

 

 

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