主役の座は誰のもの――「ブルーアーカイブ The Animation」11話レビュー&感想

(C)NEXON Games / アビドス商店街

名乗りを上げる「ブルーアーカイブ The Animation」。11話ではこれまで存在感の薄かった先生が奮闘する。その時、本作の主役の座はどこにあるのだろうか?

 

 

ブルーアーカイブ The Animation 第11話「私の生徒だから」

sh-anime.shochiku.co.jp

1.Aパートで訪れている危機

(C)NEXON Games / アビドス商店街

ホシノの行方を追う先生だったが、連邦生徒会のセントラルネットワークにアクセスしても彼女の所在は掴めなかった。そんな折、謎の呼び出しを受けた彼が向かった先には「黒服」なる者が待ち構えていて……!?

 

(C)NEXON Games / アビドス商店街

先生「声をあげ続ければ誰かにきっと届くということを、私は証明しなくてはいけないんだ!」

 

決戦へ赴く「ブルーアーカイブ The Animation」。11話は今までとは少し趣の異なる回だ。原作たるゲームではプレイヤーの分身だった「先生」は本アニメではこれまでお世辞にも存在感があるとは言いがたかったが、今回の話では生徒であるホシノを陥れた「黒服」なる男と対峙し大人の責任について語る姿にAパートがまるまる費やされている。これまでの「既存の○○の概念がピンチ→○○の概念は一つじゃない」というストーリーラインからも逸脱していて、先生を見る目が変わったという人も多いのではないだろうか。だが、彼が活躍しようとやはりここで描かれているのはピンチである。

 

(C)NEXON Games / アビドス商店街

主役サイドが活躍しているのにピンチ。矛盾して見えるかもしれないが、重要なのはこのAパートにシロコ達の出番が全く無いことだ。人数の指定でも受けたのか先生は単身黒服の指定した場所へ向かっており、それ故彼の生徒であるシロコ達は二人の問答に口を挟める道理がない。存在感の希薄な先生に代わって本アニメを牽引してきたのは彼女達にも関わらず、まるで主役が交代・・・・・したかのような齟齬がこの場面では生じている。そう、この11話で訪れている危機とは単純な勝ち負けではなく主役を巡る危機なのだ。そして実のところ、シロコ達の主役の概念を揺さぶっているのはAパートの先生に留まらない。

 

2.主役の座は誰のもの

(C)NEXON Games / アビドス商店街

この11話は主役の概念の危機である。そう考えた時、ホシノの奪還に向けてシロコ達が動くBパートでも危機は継続している。

 

(C)NEXON Games / アビドス商店街

セリカ「はあ……風紀委員会も結論は保留かあ」

 

Bパートで描かれるもの、それは先生とシロコ達アビドス廃校対策委員会による他の学園巡りだ。強固な守りを誇るカイザーPMCの基地に囚われているホシノを救うため、彼女達はトリニティやゲヘナといった大手の学園の協力を取り付けようとするが、以前手を貸してくれた便利屋68も含め外部の人間は皆判断を保留してしまい対策委員会は結局シロコ達と先生の5人でホシノ奪還に向かうこととなる。Aパートで毅然とした姿を見せた先生も話を聞いてもらうためにゲヘナ風紀委員会の生徒・イオリにノータイムで土下座して足を舐めるなどギャグキャラのような振る舞いを見せ(もちろん懸命さは伝わるが)、主役っぽさが再び薄れてしまうのだが――考えてみてほしい。もしトリニティやゲヘナがこの場で協力の意思を示していたら、奪還作戦の主役は誰になっていただろうか?

 

(C)NEXON Games / アビドス商店街

ナギサ「少しお時間をいただけますか?」

 

6話の戦闘で見られたように、ゲヘナを始めとした大手の学園はアビドスとは比べ物にならない大兵力を持っている。力関係で言っても彼女達は圧倒的に格上だ。この状況でもし彼女達が11話時点で協力を約束していた場合、奪還作戦の主導権を握る「主役」になるのは間違いなくゲヘナやトリニティの方だろう。これは規模においては対策委員会とさほど変わらない便利屋68の場合も同様で、前回ホシノの退学届にショックを受けたシロコ達を叱咤した便利屋68社長・陸八魔アルの存在感は主役の座を食いかねないものがあった。

 

(C)NEXON Games / アビドス商店街

シロコ「『おかえり』って言って、『ただいま』って言わせよう」

 

先に触れたように、本アニメの物語を牽引してきた主役はシロコ達だ。最後の最後に主役を譲り渡すことなどあってはならない。それは先生ですら例外ではなく、もし彼がAパートで啖呵を切った格好良さのまま生徒を指示しホシノ奪還作戦を成功させたなら物語はデウス・エクス・マキナによって解決させられたも同然になってしまう。それでは駄目なのだ。判断を保留した各勢力が最終的に協力してくれたとしても、最初の一歩はあくまでもシロコ達が自分で踏み出さなければならない。……そう、シロコ「達」が。

 

(C)NEXON Games / アビドス商店街

大将「行って来い、対策委員会! そして美味いラーメンを食べに戻ってこい!」

 

Aパートで先生が見せた主役らしさ。それはシロコ達の主役性を奪いかねないものではあったが、Bパートを見ても分かるように彼は実際に主役の座を奪ってしまったわけではない。どちらかと言えば、彼が見せたのは自分が主役に「加わる」資格だと言った方が適切だろう。「子供が笑えば一緒に笑って、悲しんでいるならそばに寄り添って、悩んでいるなら手を差し伸べる」のが大人だと語る彼は、主役らしさこそあってもたった一人の主役ではない。先生にとって主役はあくまでシロコ達生徒であり、彼はその背中を押せる人間になることで彼女達の輪に加わることができる。対策委員会の一員になることができる。だから彼らが決戦に赴く前、行きつけの店である柴関ラーメンの大将が見送る背中はシロコ達4人ではなく先生も含めた5人なのだろう。

 

(C)NEXON Games / アビドス商店街

この11話はこれまで存在感の薄かった先生が奮闘する回である。だが彼の活躍はシロコ達の主役の座を奪ったりはしない。「アビドス廃校対策委員会」こそは、揺るぎなき本アニメの主役なのである。

 

感想

以上、ブルアカのアニメ11話レビューでした。足舐めはネタバレ踏んでたのでそこまで驚きは無かったのですが、靴下と靴を一瞬の内に脱がしてるすっとばしぶりに笑ってしまいました。先生あんたすごいよ。
さてさて、ブルーレイ情報から見るに次回はいよいよ最終回。ホシノの笑顔がまた見られると信じて来週を待ちたいと思います。

 

(C)NEXON Games / アビドス商店街

かわいい(かわいい)

 

<いいねやコメント等、反応いただけると励みになります>