牙をむく蠱毒――「ダークギャザリング」11話レビュー&感想

Ⓒ近藤憲一/集英社・ダークギャザリング製作委員会

新たな始まりを迎える「ダークギャザリング」。11話では危険度Sの心霊スポットに夜宵と螢多朗が挑む。だが、彼女達に襲いかかるのは単なる強力な霊ではない。

 

 

ダークギャザリング 第11話「H城址・危険度S」

darkgathering.jp

 

1.逆転の落とし穴

Ⓒ近藤憲一/集英社・ダークギャザリング製作委員会

螢多朗「ここが最強心霊スポット、H城址……!」

 

強力な霊を得るため、これまでと比較にならない恐怖の心霊スポット・H城址を訪れた夜宵と螢多朗。入る前から危うさの分かるこの場所で二人が体験するものは……?
境界線を越える「ダークギャザリング」。11話では今まで以上の霊を求めて訪れたH城址での恐怖が描かれるが、螢多朗達が遭遇する霊は確かにこれまでと異なっている。単に強い、という意味ではない。まず違うのはその出自の悲劇性だ。

 

Ⓒ近藤憲一/集英社・ダークギャザリング製作委員会

老婆「家族の前に晒されるくらいならと、まだ生きていた女達は自ら喉を裂き御主殿の滝に身投げした。そこから流れる川の水は三日三晩血染めだったという……」

 

これまで螢多朗達が遭遇した霊は、己の悪行の報いを受けるような存在が多かった。1話のホステスの霊は他人の人生を踏みにじった結果の惨死を逆恨みして悪霊となっていたし、9話の脳幹霊は死者の魂を弄ぶ外道でそこに同情の余地はなかった。しかし今回のH城址の霊は虐殺されそうになった侍の家族が自ら喉を裂いて滝に身投げした悲劇から生まれた霊だし、巷の情報では死者を出しておらず善霊ではないかとすら夜宵は推測するほど。そんな霊を捕まえて使役しようとする自分達を夜宵は「今回は完全に略奪者」と認識しており、ここではすっかり善悪が逆転してしまっていると言える。そして、この「逆転」には11話で夜宵達が落ちる陥穽が隠されている。

 

 

2.牙をむく蠱毒

逆転に隠された落とし穴。螢多朗と夜宵は実は、11話早々でこの落とし穴にはまっている。

 

Ⓒ近藤憲一/集英社・ダークギャザリング製作委員会

螢多朗「どんな心霊現象が起きようが、僕達ならいける!」
夜宵「うん。やばい奴でも、捕まえてしまえば問題ない」

 

H城址に挑む際の二人は勇ましかった。螢多朗も夜宵も幾度も悪霊と対峙し、勝利の実績を重ねてきているのだから自信を持つのは当然だろう。だが注目したいのは夜宵の言葉だ。彼女はどれだけ危険な霊でも捕まえてしまえば問題ないと語っているが、これは自分を攻撃する側としか考えていない者の発想である。夜宵は「自分が狩られる側だなんてまるで考えていない」悪霊の油断を利用して相手に痛撃を加えてきたわけだが、今の彼女からは自分が捕まえられる側になることへの警戒がすっぽり抜け落ちている。善悪の構図に留まらず、いつもと立場が逆転しているのである。

 

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夜宵「螢多朗、らしくない……」

 

また、H城址に来る前に夜宵は螢多朗を「無二の相棒」とまで呼ぶ強い信頼を見せたが今回はこれも足を引っ張った。彼女は霊に視覚を操られ自分の前に現れた老婆の霊を螢多朗と誤認したが、いつもと違う様子を不思議がりながらも信頼故に正体を見抜けなかったのだ。もし彼女が以前のように1人で戦うつもりであったなら、こんな幻覚に惑わされはしなかったろう。

 

Ⓒ近藤憲一/集英社・ダークギャザリング製作委員会

螢多朗(考えが甘かった、そうでなければこんな呪いを受けることもなかった。そして何よりも、夜宵ちゃんは死ぬことはなかった……!)

 

自信だとか信頼だとかいったものは通常、人を強くしてくれる。十全な能力や、時にはそれを超えた可能性すら発揮させてくれる。だがそれらはほんのわずかの狂いで過信に繋がり、逆に能力や可能性を阻害する恐れも秘めた危険なものだ。夜宵とはぐれた螢多朗は身代わりとなる人形を持っていたが霊の呪いはそれ貫通してきたし、ようやく見つけた夜宵は霊によって既に首を吊るされてしまっていた。もし以前のように霊を恐れていれば、こんな結果にはならなかったはずだ。

 

Ⓒ近藤憲一/集英社・ダークギャザリング製作委員会

霊「忘れないで。刻みつけてあげるから……留まり続けるように、死んだ後も」

 

これまで夜宵は、自室に集めた悪霊による蠱毒で自分の安全を確保していた。しかし今回彼女と螢多朗を襲ったのは、言ってみれば自信や信頼と過信の蠱毒である。愛依を見初めた神によって破壊されたのは単なる霊同士の争いとしての蠱毒ではなく、蠱毒と彼女達の関係そのものでもあった。
蠱毒はもはや螢多朗と夜宵の味方ではない。霊だけでなく蠱毒すら牙をむく故に、H城址は危険度Sランクの心霊スポットなのである。

 

 

感想

というわけでダークギャザリングの11話レビューでした。霊に脅かされっ放しでいつ逆転が来るのかと思ったら、実は最初から逆転していたという……いくら危険でもこの2人ならやれるでしょ、と私自身も過信していたのを思い知らされました。いや、これで終わっちゃうわけはもちろんないでしょうけども。さてさて、次回はすごいものが見られそうです。

 

 

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